第6章 星月夜
凛が入浴に出てしばらくが経った。
似鳥はその間部屋に1人残り机の上を片づけていた。
無論凛に、ちったぁ机の上片づけろとお叱りを受けたからだ。
だが何故だか片づけようと思えば思うほど机は散らかっていく。
ちらりと凛の机を見た。凛のそれはとても綺麗に整理整頓されて無駄なものがなにもない。
凛がどのように机の上を片付けているのかが気になった。
少しばかり参考にしようと似鳥は凛の机に歩み寄った。
机の前に立ち、教科書はこんな風に並べてあるのか、とか、そもそも机の上に物をそんなに置かなければいいのか、とかいろいろ考える。
と、その時机の上に置いてあった凛のケータイが突然鳴り出した。
「わっ」
ふいに鳴り出したケータイに驚く似鳥。
だが着信音は短かった。おそらくメールだろう。
画面に一瞬表示された差出人に似鳥は先ほど以上に驚いた。
「この人って...」
画面に一瞬だけ表示された名前は、〝榊宮 汐〟。
(たしか、スピラノのマネージャーさん...?)
以前凛がスピラノのマネージャーについて話していたことを思い出した。
そのときはどうでもいい、興味ない。そのようなことを言っていた。
それなのに、今メールをしているらしい。
どのような経緯で仲良くなったのだろう。思うところは色々ある。
そのことを凛に尋ねてみようかどうしようか、恐る恐るケータイまで手を伸ばす。
その瞬間後ろでガチャリと音がした。
「うわぁっ!!」
「なんだよ似鳥。なにビビってんだよ。...つか、俺の机でなにしてんだよ」
「いえっ!あのっ!これは...松岡先輩はどうやって机を片付けてるのかと思って...!参考にしようかと...!!」
チクチクと刺すような凛の視線から逃げようと、似鳥は机から離れた。
「お前は余計なものを机の上に置きすぎなんだよ」
など言いながら凛は自分の机の上に置いてあったケータイを手に取りベッドに腰をおろす。
一瞬、凛がケータイの画面を見て微笑んだ気がする。
凛が風呂に行ってる間きたメールは一通だけ。
似鳥はもしかしてと思った。
「先輩」
「なんだ?」
視線がぶつかる。こういう話題は先輩には切り出しにくい。
意を決して似鳥は声を絞り出した。
「先輩は、スピラノのマネージャーさんのことが好きなんですか...?」