第11章 Emotion
汐とぶつかった夜、あんなに苛立ったのはリレーに出ることを自分じゃなくて他の男から聞いたからだった。
あの日だけじゃない、以前にもおなじようなことがあった。
汐の口から他の男の話が出るとなんだか苛立つ。
それは紛れもなく嫉妬だった。
汐には笑顔でいてもらいたい。
でもその笑顔の先にいるのは、出来るだけ俺でありたい。
他の男と仲良くしているのが気に食わない。
一番は俺だと言わせたい。
凛はそう思う。
この独占欲にも似た感情はなんだろうか。
過去の束縛から解放され、自分の気持ちや行動を省みることのできるようになった今。
その答えは簡単だった。
「汐が好きだ。俺のそばにいてほしい。」
言葉がやっと追いついた。
今考えてみれば、初めて会った時から印象的で目を離すことができなかった。
会う回数を重ねていく度に惹かれていった。
もっと知りたい。笑顔が見たい。
妙に居心地がよくて、夜汐と一緒に歩く時間が自分にとって一番心が安定してることを、この約1ヶ月会わなかった間に思い知らされた。
興味が信頼にかわった。興味が恋愛感情にかわった。
抱きしめた汐からほのかにかおるシャンプーの残り香が凛の心臓の脈打つ速さに拍車をかける。
自分の腕の中にすっぽりとおさまる汐のことが愛しくて苦しいほどだった。
汐の気持ちが、知りたい。