第5章 隣の温もり
リヴァイの部屋の前で壁に寄りかかりながら、ザラはリヴァイの帰りを待った。
我儘を言っていることはわかっている。
だが今、この温もりから離れたくなかった。
縋りたい時に縋ることのできる温もりがあるということは、それだけでとても幸せなことなのだとザラは初めて知った。
暫くすると、早足にリヴァイがやってくる。
ザラの姿を確認し、暗い部屋へと招きいれると、机の上に置いてあったランプに明かりを灯した。
か細いランプの灯りに照らし出されたリヴァイの部屋は、夜目にもよく整頓され、清潔さが保たれていることがわかった。
座れとリヴァイに目で促され、ザラはベッドの淵へと腰を下ろした。
リヴァイは兵服のジャケットを脱いで椅子にかけると、首元のクラバットを解き、全身のベルトを外してブーツを脱いだ。
「俺はもう寝るぞ。お前もジャケットやベルトを解くなら、机の上にでも適当に置いておけ。風呂に入りそびれたが今日は仕方がないだろう」
言われて、ザラは急いで立ち上がると、慌てた様子で軽装になった。
脱いだ服をザラが畳んで机の上に置いている間に、リヴァイはふと厩舎の床に二人して座ったことや、ザラに至っては藁に横たわっていたことなどを思い出し露骨に嫌な表情を浮かべたが、明日まとめてシーツを洗濯することにし、そのままベッドに滑り込んだ。
「ザラ…ランプを消してくれ」
リヴァイに言われて、ザラは短く返事をすると、ランプの炎を吹き消した。
途端に部屋は闇に覆われ、窓から差し込む月明かりだけが頼りになった。
暗闇の中に、寝具の白さがぼんやりと浮かび上がる。
その中で、リヴァイがベッドの中から掛け布団の端を持ち上げて待っていた。
「何してる、早く来い」
明かりを消したあと、どうすればいいものかと立ち尽くしていたザラをリヴァイが招いた。
どうやら、このまま同じベッドに入れということらしい。
さすがに無礼が過ぎるのではないかとまごついていたが、リヴァイが視線で早くと訴えてくるので、ザラは腹を括ってリヴァイの横へと滑り込んだ。
ベッドのなかで二人の足先が触れ、ザラのつま先のあまりの冷たさに、リヴァイが思わず顔をしかめた。
.