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【リヴァイ】君がため

第5章 隣の温もり



「知れば知るほど、後を追いたくなる。色んな顔を見たくなって、気がついた時には……目を離せないでいる」


どこか遠くを見つめて、リヴァイは淡々と言葉を紡いだ。
ザラは肯定も否定もせず、黙って耳を傾けている。


「好きでもないやつにあれこれ世話を焼いたりなどしない。ペトラも、クソメガネも、きっとお前のことが好きで堪らないんだろう。お前の存在は、きっとどこかであいつらの心を支えている。お前の明るさが、底なしの純粋さが、人の心を動かすんだろう」


本当にそうだろうかとザラは思った。

自分の存在が、果たしてペトラやハンジに良い影響を及ぼしているのかザラにはわからなかったが、そうであったらいいなとだけ、心の隅で小さく思った。


リヴァイはどうであろうか。

リヴァイは一体、私の何に動かされたのだろうとザラは考えを巡らせたが、明確な答えは思い浮かばなかったし、本人に答え合わせをしようなどとも思わなかった。



「…さて」


厩舎の小窓を見上げて、リヴァイが呟いた。


「随分と冷えてきたな。兵舎に戻るとするか」


こくりとザラが頷く。
細い肩を抱いたまま立ち上がると、リヴァイは寄せていた身をそっと離した。


リヴァイが先に歩き、その後をザラが追う。
ザラはどこか寂しい気持ちで、前を歩くリヴァイの足元を見つめていた。


「…そうだ、お前の安否をハンジたちに伝えてくる。心配して探し回っていたからな。お前もこのまま、今日はもう休め───、」


兵舎の前へと辿り着き、振り返ってザラの顔を見るなり、リヴァイは思わず言葉を詰まらせた。

名残惜しそうな目をして、ザラが躊躇いがちに見上げてくる。
言葉にこそ出しはしなかったが、離れたくないとその目が訴えていた。


「…まだ、傍にいたいか?」


寂しそうなザラの目に吸い込まれるようにリヴァイは思った。
思わず、口をついてそんな言葉が滑り出た。

ザラの目が大きく何度か瞬き、いいのかと問いかけてくる。


俺もとんだ甘いやつだなとリヴァイは思わず心の中で苦笑した。

小さく笑うと、すっかり弱気になっているザラの頭をくしゃりと撫でた。



「…先に俺の部屋の前で待っていろ。場所はわかるな」


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