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【リヴァイ】君がため

第5章 隣の温もり



てっきり明るく送り出してくれると思ったのに表情を硬くしてハンジがぎこちなく押し黙ったので、ザラは何か変なことを言ったかと不安になった。


「…ザラ」


一瞬だけ顔を伏せたハンジが、もう一度ザラの方を見て、寂しそうに笑った。


「…君と同室だった新兵は、君とペトラ以外、戻らなかった」


え、と小さく、微笑んだままのザラの口から声がこぼれた。


「…今回の壁外調査は、今までに比べて、特に犠牲者が多かった。初めての壁外調査で命を落とすとされている新兵の割合は大体三割程度と言われていたけれど、今回の調査では、……五割に近い新兵が、壁の外で、命を落とした」


五割、とザラは口の中で呟いた。
頭の中を仲間の顔がよぎっていく。


一体、誰が?
誰が死に、誰が───……


ザラはかぶりを振った。
考えるのはよそうと思った。

三年間同じ釜の飯を食い、苦楽を共にした仲間の、一体誰が生き残り、誰が死んだかなど、知りたくもわかりたくもないと思った。



「けれど…いいかい、君は生き残った。君が、君の命の在り方をどう定めているか私は知らないが、君は生き残ったんだ。亡くなった誰かの命によって、私たちは、生かされている」


ハンジは声が荒ぶりそうになるのを堪え、静かにザラの両肩に手を置いた。
その手が僅かにと震えていた。


「どんなに辛くても、悲しくても、私たちは、生き続けなければならない。それが私たちの───この世界に残された者たちの、せめてもの償いだ」


顔を伏せたまま押し黙っていたザラは、やがて、こくりと頷いた。

それどころか、顔を上げてハンジの目をまっすぐ見据えると、弱々しくはあったが、気丈に笑って、わかりましたと答えた。


ハンジはてっきり、ザラが泣き出すものとばかり思っていた。


ああ、と胸中でハンジは呻いた。

この子もまた、感情に蓋をする術をどこかで学んでしまった子なのだと、小さく会釈をして去っていく後ろ姿を見つめながら、ハンジは思った。


調査兵団に長く属すれば属するほど、感情を司る神経が麻痺していくようにハンジは思う。
ことに、上官となってからは尚更だった。
上官の動揺や恐怖心は、そのまま下の兵士たちに影響する。


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