第5章 隣の温もり
今は何時だろうと思って部屋を見渡す。
窓の外は夕暮れだった。
壁外調査から戻ってきた時も夕暮れだったが、あれから優に何時間も経っている感覚がある。
どのようにして自室のベットにまでたどり着いたのか記憶が定かではないが、戻ってきてから死んだように丸一日ザラは眠っていたようだった。
大きく息を吸って伸びをすると、体の至るところがずきずきと痛んだ。
軽い捻挫や打撲が、身体中にできているようだった。
まずは風呂へ入って──それから、何か食べようと思った。
みんなはどこへ行ったのだろう。
今日は、休んでいていい日だったのだろうか?
思案を巡らせながら廊下へと出ると、偶然にもそこを通りかかったハンジとばったり出くわした。
ザラの顔を見るなりハンジはぱっと顔を輝かせザラに抱きついた。
「ザラ!目が覚めたんだね!よかったあ。昨日壁外から帰ってきたっきり、一度も眼を覚まさずに眠ってたんだよ。気分はどうだい?」
『わ…悪くありません。随分長い間、眠りこけていたようで……ご迷惑をおかけしました。えっと、皆さんは今何を…』
「ああいいんだよ、初めて壁外へ出た新兵なんて、今日はほとんどみんな休んでいるさ。たまたま早くに目が覚めて動ける新兵の何人かに仕事を手伝ってもらってるくらいだよ」
四人部屋の自室にはザラの姿しかなかった──ということは、みな早くから起き出して、色々と作業していたのだろうか。
そんな風に考えを巡らせたザラの顔色を敏感に読み取ったのか、ハンジは努めて明るい声音で言った。
「ああ、ペトラはその中でも一際早く目が覚めたんだ。元気な子だね。昨日の今日で、もうはきはき働き出すんだもの、みんなびっくりしたよ。でも、壁外調査の次の日なんて全く動けなくなったって不思議じゃないんだから。それだけ身を酷使したんだよ。使ったのなら、しっかり労ってやらないとね」
『ありがとうございます…でも、そっか、みんな凄いなあ』
慰めてくれたハンジの好意に応えようと笑いながらザラが続けた。
『私の部屋なんて、他の新兵はみんないませんでしたよ。遅れをとってますね私。早くみんなのところへ行かなくちゃ』
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