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【リヴァイ】君がため

第2章 第一印象は最悪



ザラの脳裏に、幼き日をともに過ごした幼馴染の姿がよみがえった。
のんびりとした温厚な性格の男で、その気質が生まれ故郷の豊かな自然によく溶け込んでいたことを覚えている。
腕っ節などではどちらかといえばザラの方が勝っていたし、勝負事だとか争いだとか、そういうものとは無縁の人だった。
そんなアーヴィンが訓練兵になってから、早6年の月日が流れようとしている。

遠い地からは訓練の様子や健康状態が記された手紙が時々送られてきただけで、この6年、ザラは彼と離れて暮らしていた。

6年の間に、アーヴィンは変わっただろうか。
そんなことを時折ふと、ザラは思うのだった。


「でもいいなあ、幼馴染なんて。初恋の人だったりするの?」

『まさか。お兄ちゃんみたいな感じよ』

自然な風を装って否定したものの、本当のことを言い当てられたのでザラは内心どきりとした。

ザラとアーヴィンは、子供がさほど多くない集落の出自だった。
同じ年頃の男女も数が限られていたし、幼い頃から深く親交のあったアーヴィンを好きになるのも、至極当然のことだった。

「お兄ちゃんが同じ兵団にいるなら、何かと頼れるからいいわよね」

笑ってごまかしたザラの言葉尻に、ペトラは敏感に何かを感じ取ったようだったが、それ以上の追求はしなかった。


話題があちこちへ飛び、他愛もない雑談を思う存分したあと、食事を終えた二人は食器を片付けようと席を立った。
食器を乗せたトレーを持ち、さあ洗い場へ向かおうとしたその時、不意に長椅子に膝をぶつけてザラがよろめいた。

よろめいた先、転ぶ一歩手前のところで何とか踏みとどまりはしたものの、ちょうど通路を歩いていた人と危うくぶつかるところだった。
ザラの目線の先に、すんでのところで立ち止まってくれた人の足先が見えている。

『ごめんなさい、ぶつかりそうになってしまって……』

即座に謝ろうとしたザラは、顔を上げるなり思わずそこで言葉を切った。

艶やかな黒髪。
鋭い光を宿した双眸。

昨日の信じられないような粗相から、もう絶対に忘れまいと決意したその人が、ザラの目の前に立っていた。


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