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【リヴァイ】君がため

第2章 第一印象は最悪



『さい、あく、だよ!』

ザラの悲痛な叫びが、調査兵達で混み合っている夜の食堂に響き渡った。

食事とならば普段は目の色を変えて飛びつく彼女が、今日はよほど思い悩んでいるのだろうか、夕食を前にしても一向に手をつけずに頭を抱えている。

ザラの隣の席に座っていた同期のペトラ・ラルは、そんな彼女を横目に、夕食のパンを口の中へと押し込んだ。

「でも、どうして気がつかなかったの。リヴァイ兵長なんて、下手したらエルヴィン団長より有名な方じゃない。訓練兵だったからって言い逃れできないわよ、私たち実際何度もあの方をお見かけしてるもの」

『ええー、嘘でしょう。確かに、「あ、どっかで見たかもな?」くらいには思ったけど……』

口を尖らせて言うザラに、ペトラは心底信じられないといった様子で大きなため息をついた。

『でも私、あのあとエルドに言われるまで、あの人がリヴァイ兵長だって気がつかなかったのよ。でもわかった。まとうオーラで、同期ではないことはわかった。とにかく、私は上官を噴水に向かって突き飛ばしたんだな……って、それくらいはわかってた』

「リヴァイ兵長でないにしろ上官を、いえ、人を噴水に向かって突き飛ばすのはどうかと私は思うけどね……」

至極真っ当な意見にザラは依然として不服そうだったが、ようやく夕食を食べる気になったのか、野菜スープを掬ったスプーンにそっと口をつけた。


「それで?そのリヴァイ兵長と間違えた例の幼馴染には会えたの?」

明るい表情でペトラが言う。

『それが会えてないの。団長、今、王都へ招集されてるじゃない?』

ペトラが頷く。
ザラの言う通り、調査兵団第13代団長であるエルヴィン・スミスは現在職務の一環として王都へと赴いていたが、何でも、例のアーヴィンも入団2年目の比較的新米でありながら、エルヴィン団長の護衛として王都へと同行しているそうなのだ。

アーヴィンを訪ねにいって同期の調査兵からそれを聞かされた時、ザラは心底がっかりしたのだった。

『どうしてだろう、よほど護衛の腕が立つのかな? 故郷にいた頃はどちらかというと戦いとかには疎い方に思えたけど』

「戦いの腕が全てじゃないじゃない。恐ろしく頭が切れるとか、勘が働くとか、そういう役立ち方をしてるのかもよ」



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