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【リヴァイ】君がため

第4章 変わりゆく関係、別れ



心のどこかで、かちりと音がなった気がした。

同時に、急に右の手首が締め付けられるように痛くなって、ザラは思わず自分の手首を強くおさえた。


『悲しい…ですか?』

「あ? 今、そう言った」

『私が、死んだら?』

「…だから、そう言っている」

『はは』


ザラは声に出して小さく笑ったが、目までは笑っていなかった。


『兵長、悲しいんだ。私が死んだら。そうなんだ。……そうなんだ』


急に砕けた様子でザラが言うので、リヴァイは眉をひそめてザラを見た。

喜んでいるのか、悲しんでいるのか、一見、そのどちらともとれないような様子だった。


『そうやって、兵士の一人一人を、目に掛けてくださってるんですか? すごいお人だなあ。私には到底、出来ないや』

「…別に、兵士全員にやっているというわけじゃあない」

『私、特別ですか』

「ハッ、調子に乗んな」



ザラの存在が、リヴァイの中でそこらの一兵士と違うことは明白であった。
それを認めるのは癪に触るが、事実なものは仕方がない。


鼻であしらったあとに、リヴァイはふと目を細めて、ザラを見つめた。


「…俺たちゃ始まり方こそ、奇妙なもんだったが」


ザラの髪をさらさらと撫でて、リヴァイは続けた。



「…お前がいる毎日は、退屈しねえ、日々だった」



かちり。
また胸のどこかで、音が鳴った。

ザラはぼんやりと、この音はなんだろうと思った。



『…私もっと、兵長に教わりたいこと、ありました』

「は、なんだ急に、かしこまって」

『私もっと、兵長のお傍で、お仕えしたかったんです。本当です。兵長に教わりたいこと、兵長のお傍で学びたいこと、たくさんあるんです。だからもっと、』


頭を撫でていたリヴァイの手を唐突に掴んで、ザラはキッと顔をあげた。


『───だからもっと、お傍にいたかった…』


この感情は、なんだろう。
崇拝とも畏敬とも違う、この感情は、一体何だろう。


しかし今はそんなことどうでもいいと思った。

死人に口なし。
死んだら最後、もう伝えられない。


アーヴィンの声が、ふと耳朶に蘇る。
ザラはどうしても死ぬ前に、今この人に伝えたいと思った。


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