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【リヴァイ】君がため

第4章 変わりゆく関係、別れ



「ほう、上官にどいてくれとは、この二ヶ月で随分ふてぶてしくなったな? ザラよ」


くす、と笑って眼を開けると、思った通り憮然とした態度のリヴァイがそこにいた。

早朝だというのにもう兵服を着込み、ご丁寧にベルトまで締めている。

壁外調査の日、彼はいつもこうなのだろうか。



『おはようございます。兵長、お早いんですね』

「…てめえと同じ、たまたま早く、目が覚めただけだ」


リヴァイは静かに、ザラの横に腰を下ろした。

寝巻き姿のまま挨拶をするなど、普段であればこっぴどく咎められそうなことであるが、壁外調査の日の朝にもなってリヴァイもあれこれ口うるさく言いはしないようだった。


『…いよいよですね』

「何がだ」

『何がって…壁外調査ですよ。兵長、今絶対にわかってたでしょう』


すっとぼけたことを言うリヴァイにザラは思わず笑ってしまった。


『はあー、怖いなあ』


笑った勢いで、そんな言葉がするりと口から滑り出た。


『すっごく、怖いなあ。行きたくないなあ。……生きて、帰りたいなあ』


言ってからザラは、心の奥底の、どこにこんな感情たちが眠っていたのだろうと思った。

言葉というものは、実体を持たないくせに確かにそこに存在する。

アーヴィンの前でも赤裸々に吐露できなかった思いが、リヴァイを前に、確かな輪郭を伴って体の外へと飛び出したようだった。


言ってから、ザラは唐突に腑に落ちた。

ああそうか、と思った。


『私…怖いんですね。この壁外調査が。巨人と戦うということが』

「…怖くねえやつなんて、いないだろ」


ザラへ向けて、リヴァイが小さく言った。


「誰だって命が惜しい。死にてえやつなんているもんか。誰だって生きて、またここで仲間に会いたいと、そう思う」


ザラは顔を上げて、リヴァイを見た。
眩い朝日に包まれ、調査兵団の兵士長は、わずかに目を細めていた。


『…兵長、悲しんでくださいますか』


ザラは思わず、その瞳へ向かって問いかけた。


『私が死んだら』

「……愚問だな」

『…すみません、調子に乗りました』


忘れてくださいとザラが笑おうとすると、華奢な手に頭を撫でられた。



「悲しむに、決まってるだろう」



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