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【リヴァイ】君がため

第4章 変わりゆく関係、別れ



言い切って、顔を上げると、あまりにも優しいリヴァイの視線とぶつかった。
ぐっと喉が詰まるのをザラは感じた。


(ああ…この人はこんなにも、)


優しい顔をする人なのだ、とザラは思考が停止した頭の片隅で、ぼんやりと思った。

普段は鋭い眼光を宿す瞳が、優しく細められ、揺れていた。


「…そうか。いや、体調でも悪いのかと、疑っていたんだ」

『い、え…悪くありません』

「そうか、ならいい」


ザラがいつまでも驚いた顔をしているので、リヴァイは思わず、面白がってザラの額を指で弾いた。
一瞬びくりと肩を揺らしたザラが、驚いて額を押さえながら、まじまじとリヴァイの顔を凝視する。


「…ふ、子供みてえなツラしてら」

『こ、子供みたいなことしてるのはどっちですか!』


笑われたことにむっとして、顔を真っ赤にしたザラが声を張り上げて反論する。

リヴァイがあまりにも楽しそうに笑うので、ザラは表情では怒りつつも、嬉しさを感じずにはいられなかった。
リヴァイが他人に対して抜かりなく引いている線よりもほんの少し内側へ、招き入れられたような気がしたのだった。


『兵長ってもしかして、周りが思っているよりもずっと…』

───優しくて、取っ付きやすい方なんですか。


言葉を紡ごうとして、ザラは思わず口をつぐんだ。

こんなことを言おうもんなら、あとから何とどやされるかわからない。

触らぬ神になんとやら。
兎にも角にも、この人の前で余計なことは言わない方が賢明だとザラは学んだのだった。


「…あ?なんだよ」


ザラの言葉の続きを待っていたリヴァイであるが、ザラが一向に先を言おうとしないので、訝しげに眉をひそめた。

ザラはかぶりを振ると、リヴァイを見つめて微笑んだ。


『…いえ、忘れてください』


リヴァイはまだ何か言いたげだったが、ザラの穏やかな笑みを見ているうちに、それもどうでもよくなったようだった。

ほとんど無意識のうちに、引き寄せられるようにしてザラへ手を伸ばす。
ザラの頭に手を置き撫でると、ザラもそれを受け入れた。


「……変なやつ」


表情のころころと変わる、俺を臆さぬ変な新兵。


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