第4章 変わりゆく関係、別れ
次の日、リヴァイは不審な動きばかりするザラを遠くから目で追っていた。
朝から不自然にザラに避けられているような気がしている。
確証はないが、いつもならば遠くにリヴァイの姿を見つけると、駆け寄ってでも挨拶に来るザラが、今日はリヴァイの姿を見つけるや否や、くるりと体を翻してその場を去った。
そればかりでなく、食堂や執務室前の廊下などリヴァイが居合わせている空間ではそそくさと動き回り、やはり意図的にリヴァイを避けているようである。
思い過ごしかどうか実際にザラと接触して確かめてみたい気もしたが、何故俺がそこまでせねばなるまいと気を改め、遠くからその姿を見守るだけに留めた。
新兵達の訓練の様子を高みから見物しながら、ザラの動きを目で追った。
新兵の中では群を抜いて立体機動の腕が際立っているが、やはり今日はその動きもいまいち洗練さに欠けているようにリヴァイの目には映った。
体の調子でも悪いのかと少々不安な気持ちになる。
リヴァイは見張り台から降りると、その足でザラの元へと向かった。
一方、当のザラはというと、今日の自分の動きにいつものようなキレがないことは百も承知であった。
思うように重心が乗らず、無理やり体を動かして強引に移動している手応えがある。
今日は自分の動きを分析しようなどという気にもなれず、個人の自由訓練もやめ、早々に自室へと引き上げようと立ち上がって───
───危うく、心臓が口から飛び出るところだった。
「…よう、調子はどうだ」
勢いよく立ち上がった先に、今日一日苦労して避けていたリヴァイが平然と立っていた。
目を瞬かせるザラの頬にさっと赤みがさす。
理由は簡単で、今朝リヴァイとアーヴィンが入れ替わる夢なんて見てしまった手前、リヴァイと顔を合わせるのが気まずいのであった。
『お…疲れ様です、兵長』
視線を泳がせながら躊躇いがちにザラが答える。
普段はすぐにコロコロと笑いだすくせに、今日はその表情すら曇って見える。
一体なんだ、とリヴァイは思った。
「お前、体の具合でも悪いのか。顔も赤い」
リヴァイの手が伸び、ザラの額に触れようとしたところで、驚いたザラが咄嗟にその手を払い除けた。
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