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【リヴァイ】君がため

第4章 変わりゆく関係、別れ



その日、ザラは不思議な夢を見た。


いつの間にか、ザラは夜の暗がりの中を歩いていた。
誰かに手を引かれている。

この人は誰だろうとぼんやり考えて、そうだ、手の甲の怪我に気付かれて、手当てを受けろと怒られたのだったと思い出した。


ぼやけていた夢の輪郭が、徐々にくっきりと見えてくる。


視線を上げると、自分の手を引く者の後ろ姿が見えた。
夜風に吹かれ、その人の黒髪が靡いている。

アーヴィン、と声に出して呟くと、手を引いていた人が立ち止まった。
こちらを振り返る。


切れ長の眼に、控えめではあるが、たしかに燃える炎を見た。

リヴァイだった。



そっと握っていた手を引かれる。
あ、と思う間もなく、気がついた頃にはリヴァイの腕の中にいた。

リヴァイから香る匂いが、胸をいっぱいに満たして、ザラは言いようのない切なさに襲われた。


リヴァイ、と小さく呼ぶと、ザラの顔を覗き込んで、優しく瞳が細められた。


夢の中で、ザラはリヴァイが上官であることを忘れていた。

リヴァイは同郷の幼馴染みで、自分の初恋の人で、想い人であると、夢の中で、疑うことなく信じていた。


この手を知っている。
この匂いを知っている。
このぬくもりを、知っている。

リヴァイの胸の中できつく眼を閉じると、背中に回された腕に力がこもった。



 ───ザラ


名前を呼ばれる。


答えたかったのに、声が出なかった。

言葉の代わりに、顔を上げて眼を見つめると、ゆっくりとリヴァイの唇が落ちてくる。


閉じた瞼に口付けが落とされたところで、ザラは、ふっと眼を覚ました。
ぼやけていた視界がだんだんとはっきりし、見慣れた天井が眼に入る。

しばらくの間、そうして天井を見つめながら、ザラは、何が現実で、何が夢だったのかわからなくなった。
ゆっくりと身を起こす。


小さく、リヴァイ、と呟いてみて、その響きの違和感に気が付いた。

ああ──そうだ、リヴァイ兵長は上官で、幼馴染は、アーヴィンだった、と当たり前のことをゆっくり心の中で確かめる。


何故、あんな夢を見たのだろうと思った。


握られた手は、どちらのものだったのか。

抱かれた温もりは、落とされた唇は、一体、誰のものだったのだろう。


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