第4章 変わりゆく関係、別れ
リヴァイはふと顔を上げて窓の外を見た。
いつの間にか長いこと話し込んでいたようだった。
窓の外の闇が、もう随分と深いことに気が付く。
まだ担当医は戻ってきていなかったが、時期に戻るだろうと踏んで、ザラと共に医務室を出た。
兵士達ももう眠りについている者が多いのだろう、辺りはしんと静まり返っている。
『兵長は、エルヴィン団長と随分親しい間柄ですよね』
「エルヴィンと?…そう見えるか」
『あれ、違うんですか?』
きょとんとザラが目を丸くする。
間違ってはいないが、親しい間柄などという簡単な言葉で片付けられるほど単純な関係の二人ではなかった。
「まあ、あいつのことだけは…信じる価値があると思える」
信じる価値、とザラは胸中でリヴァイの言葉を繰り返した。
前に、リヴァイも人を愛したり、胸を焦がすような経験をしたことがあるのだろうかと考えた時があった。
異性への思慕の念などではなかったが、リヴァイの心の奥底にもちゃんと他者の存在があり、少なからず、リヴァイの心の拠り所になっているのだとザラは思った。
『…私は、団長が怖いです。どこから物を見てらっしゃるのか、私には全く、わからなくて』
つい素直な気持ちでザラが本心を口にすると、リヴァイは意外そうに目を見開いた。
「ほう、奴が怖いのか。俺よりも?」
『え?兵長は怖くありませんよ』
「初めは酷くびびってたじゃねえか」
『そっ…、それは仕方ありません。兵長、顔怖いんですもん』
言ったな、とリヴァイがザラの頭をどつこうとすると、間一髪のところでするりとザラはリヴァイの拳を避けた。
リヴァイが忌々しげに舌打ちをすると、楽しそうにくすくすと笑う。
楽しそうに笑うザラを横目に、我ながら、随分とよく懐かれたものだ、とリヴァイは思った。
元々人に対して距離を置かない性分だということもあるのだろうが、ザラが自分のことを上官として慕っているのは直接言葉にして聞かずとも、ザラの態度を見ているだけでよくわかった。
『あ、兵長この棟ですよね。それでは…おやすみなさい』
リヴァイの自室が位置する棟の前で、敬礼をして別れる。
リヴァイは一つ微笑むと、静かに建物のなかへと入っていった。
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