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【リヴァイ】君がため

第4章 変わりゆく関係、別れ



なんだそりゃ、とリヴァイが笑う。

信じていないような口ぶりだったので、本当ですよ、とザラは身を乗り出して念を押した。


『そうだ兵長、聞いてください。こないだ、ハンジさんが───』


ザラが思い出したように雑談を始めると、触れ合っていた二人の手はするりと離れた。


顔では笑顔を浮かべつつも、ザラは内心、ほっと胸を撫で下ろした。

ごく自然な流れで、いつものような他愛のない話のやりとりに移れたようだった。
そっとリヴァイの顔色を伺う。

もう二人の間に、つい今しがたまで流れていた、普段より僅かに重い、何らかの思惑を含んだ空気は漂っていなかった。


リヴァイと話していると、時折こんな風に二人の間に、互いを探り合うかのような僅かに緊迫した空気が流れることがあった。


『で、モブリットさんが、今日こそは休んでもらいますからねってハンジさんを執務室から引きずり出して、ようやく騒動が収まったんです。私その後、ハンジさんを浴槽まで引っ張っていったんですよ、───ああおかしい、私、人を地面に引きずったのなんて、生まれて初めてで』


はじめこそ咄嗟に探して話し出した話題だったが、話し出すうちにその時の様子がありありと目に浮かび、ザラは目に涙を浮かべて笑った。


放っておくと何日でも巨人の研究に没頭してしまうハンジを分隊長に構えたハンジの部下は、隊での生活を続けていくなかで自然とハンジの世話の仕方を覚えていくのであった。

最近では新兵であるザラ達も随分と手慣れたもので、戸惑っていたのははじめの二日だけ、最近では動じずにハンジを机から引きはがせるまでに成長した。


「あいつの巨人に対する熱意はまったく理解し難いな。何に没入するかは人の勝手だと気にしねえようにしているが、あれだけは俺は理解できない」

『ええ、まったくの同感です。一体巨人の何が、分隊長をあそこまで駆り立てるのか…』


巨人好きの変人として兵団でも名高いハンジである。
もっとも、彼女は他人からの評価など、露ほども気にしていないようだった。


「とにかくあいつは無鉄砲だ。巨人を前にするとさらに、な。余程の窮地に立たされない限り、部下になんざ目もくれねえぞ。お前も壁外では気をつけるこったな」

『ぐっ…胸に刻んでおきます』


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