第3章 生意気な新兵
ハンジの言葉をかき消すようにザラは声を張り上げた。
突然のことに、食堂にいた者が一斉にザラの方を振り向く。
団長に兵長、分隊長だ。
おや、例の新兵もいるぞ?
なんだなんだと外野から声が上がるのを耳に、ザラはこんなことばっかりだ!と心の中で頭を抱えた。
「…ほう、見間違えたにしちゃあ、背がなんだって?続きも聞かせてくれよ、なあ、ラドフォード?」
目の据わったリヴァイが口元に笑みを浮かべながらザラへと歩み寄る。
ザラは身の危険を感じ咄嗟に後退りした。
『ち、違います!いや違わないんですけど!でも違うんです!』
ここまでくるともうしどろもどろである。
近づいて来るリヴァイからじりじりと後退りしながら、ザラは必死に抵抗した。
『あの!だって知らないじゃないですかこんなに背が伸びてるとか!いや、違いますよ、別に兵長の背が小さいとかそういうことを言ってるのではなく……ていうか!』
ザラは涙目になってアーヴィンを睨みつけた。
『そもそもアーヴィンが王都になんて行ってなければこんなことにはならなかったのに!』
「無茶言うな!濡れ衣にもほどがあるだろ!」
「…なるほど、それならアーヴィンに王都同行を頼んだ私にも非があるな」
反発するアーヴィンの横から、さも楽しげに口を挟むのはエルヴィンである。
『や、ちょ、違うじゃないですか団長ぉ!団長に非はないです、ていうか、何ですかこの四面楚歌!味方が皆無!』
頭を抱えてザラが悶えるのをリヴァイ以外の面々が笑い声をあげて見守る。
リヴァイはというと、依然として面白くなさそうにザラを睨んでいる。
「チッ、覚えてろよザラ・ラドフォード…」
『ちが、あの、……兵長。ようやくあの、誤解が解けたじゃありませんか。和解…してくださいましたよね、昨日』
必死に言葉を選びながらザラが続ける。
『私兵長のこと、お慕いしてます。本当にあの、尊敬してるんです。ですから、えっと、その…』
「その?」
続きをリヴァイが促すが、もうどうやって収拾をつければいいのかザラにはわからない。
ぐるんぐるんと目を泳がせながら、ザラは声を振り絞った。
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