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【リヴァイ】君がため

第3章 生意気な新兵



『アーヴィン、もう壁外調査へは何度も行ってるんでしょ。…怖かった?』


調査兵団に属していながら愚問だとは思ったが、ザラには聞かずにはいられなかった。

巨人と実際に戦う恐怖は、今まで様々な場所で聞いているが、実際によく見知った、幼馴染の口から聞きたかったのだ。


「…ああ、行ったよ」


アーヴィンの目に、何かを思い出すような色が揺れる。
優しい目元に影が差し、険しい表情になった。


「怖かったさ。何度も死ぬかと思ったよ。…実際、何人も死んだ。訓練兵の頃から仲の良かった友人も」


悔しげに歪められたアーヴィンの顔を、ザラは黙って見つめていた。
アーヴィンのこんな表情を見るのは初めてだった。


ああ、とザラは心の中で低く呻いた。


アーヴィンはここで、自分が知らない苦しい経験を、何度も、何度もしてきたのだと痛いほどにわかった。

アーヴィンの表情が、全てを物語っていた。
ザラの知らないアーヴィンが、そこにいた。


「…はは、なんて顔してるんだよ」


きつく唇を噛み締めるザラの様子に気がついたのか、アーヴィンは小さく笑うと、ザラの滑らかな頬を指で撫でた。



「…もう、壁外調査へ行く覚悟は定まったとばかり思っていたが」


互いが、互いの両目をじっと見つめていた。


「次の壁外調査からはお前も一緒に行くのだと思うと、気持ちが鈍るな」

『え?』

「同じ兵団で、そばにいられるのは嬉しい。だが、できることなら…」


壁の外へお前を連れて行きたくないとアーヴィンが言うのと、背後からアーヴィンの名が呼ばれるのは、ほぼ同時だった。


名前を呼ばれて、アーヴィンが顔を上げる。

視線を巡らしてみると、声の主はエルヴィンだった。
傍らにはハンジとリヴァイの姿もある。


「団長!」


さっと敬礼したアーヴィンに少し遅れ、ザラも体をエルヴィンの方へと向けて敬礼をした。


「昨日はご苦労だったなアーヴィン。今日は調整日にして訓練は休むように。…おっと、話してる最中だったのか、邪魔をしてすまない」


エルヴィンの青い双眸がザラの姿を捉える。
するとハンジがエルヴィンの横から身を乗り出し、声を張り上げた。



「エルヴィン、この子だよ!私がさっき言った、面白い新兵!」


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