第3章 生意気な新兵
『リヴァイ兵長、おはようございます!』
翌日、自室を出て少ししたところで、偶然にもザラと出くわした。
兵服をきっちりと着こなし、折り目正しく敬礼をするザラを横目に、リヴァイはおはようと小さく返す。
「朝から元気なやつだな」
『そ……、そうでしょうか。リヴァイ兵長のお姿が見えたので、つい、嬉しくなって』
ザラの前を通り過ぎると、リヴァイの足取りにあとから早足でにこにことついてくる。
今まではやたらと警戒していたのに、誤解が解けた途端にこれか、とリヴァイは思った。
ハンジがザラのことを、あれは相当人懐こい素直な子だと称していた意味がようやくわかった。
感情を隠せないところといい、昨日の正面切っての啖呵といい、基本的に自分の感情にまっすぐな人種なのだろう。
『兵長、お早いんですね』
「まあな、てめえほどではねえが」
『え?』
「あ?なんだ、厩舎に行ってたんじゃねえのか」
ザラはぎょっとして目を丸くした。
朝方、誰よりも早く厩舎へと赴き、馬たちの世話をしていることは誰にも打ち明けていなかった。
『ど、どうしてご存知なんですか?』
「俺の部屋からたまたま見える位置にあるんだよ、厩舎が。で、いつだったか朝から元気に馬たちの世話を焼くてめえの姿を見かけたことがある」
『あ、そうなんですか……、そうなんですね』
リヴァイの返答に、ザラは、なあんだ、という風にため息をついた。
『てっきり千里眼か何かをお持ちなのかと思いましたよ。伊達に人類最強と言われてないなと』
「あ?おちょくってんのか」
『まさか!でも普通、そんな行動パターンを知られてるなんて思わないじゃないですか。超能力者か何かかと勘ぐりましたよ』
「俺の目線の先を、たまたまてめえがチョロチョロしてただけだ」
『そ、そんな、虫かなんかみたいに……』
若干たじろぎつつザラが言う。
ふ、とリヴァイが小さく笑ったところで、後方から二人のことを呼ぶハンジの明るい声が聞こえてきた。
「朝から一緒だなんてどうしたの!いつのまにそんなに仲良くなったんだい?」
怪訝な表情をされるとわかっていながらリヴァイの脇腹を肘でハンジがつつく。
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