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【リヴァイ】君がため

第7章 歴史の動く時



リヴァイは小さく笑ってザラを見つめた。
その笑みがあまりにも悲しげだったので、ザラの胸はまるで鷲掴みにでもされたように強く痛んだ。


「……死ぬなよ」


リヴァイは小さく言って、踵を返した。


「俺に後悔、させないでくれ」


弱気なことを言っている自覚はあった。
ひどい醜態を晒している自覚も。
だがリヴァイは伝えないと必ず後悔すると思い口にした。
愛しているとは言えなかった。
だが必ずザラに伝わるものと信じてその場を後にした。


ザラは遠ざかっていくリヴァイの背中を茫然と見つめていた。
いつしか、振り返らないでくださいねとリヴァイに言ったことがある。

リヴァイは振り返らなかった。
けして振り返ることなく、戦場への道筋を確かな足取りで辿っていった。



ペトラに抱き寄せられたまま、ザラは自分の胸ぐらを掴み、きつく目を閉じた。
忘れねばと思った。
リヴァイと自身にまつわる一切のことを忘れ、任務に集中せねばと強く唱えた。

今自分は他ならぬリヴァイ班の兵士で、身命を賭して守るものがあり、ついて行くべき偉大な背中がある。
その背中は振り返らない。
決めた道を進み切るまで、振り返ることは決してない。
進むしかあるまいとザラは思った。

進んで、そして、帰ってきたら、あの人ともう一度深く話し合おう。

私が抱える葛藤を───あの人はきっと理解してくれるはずなのだから。



「さあザラ、目を開けて」


ペトラの言葉に誘われて目を開ける。
一行は程なくして、門前へと到着しようとしていた。



「……行こう、ザラ」


ザラは深く頷いた。



リヴァイ班の───そして調査兵団の真価の問われる時だった。
失敗は、許されない。


やってやる、とザラは思った。
何が起きようと必ず後悔せぬ方を選び、一体でも多くの巨人を殺してやる。


……殺してやる。



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