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【リヴァイ】君がため

第7章 歴史の動く時



リヴァイは愕然とした。
ザラを苦しめる根源は、他ならぬ自分だった。
口の中がからからに渇き、目眩がするようだった。
眼前へと突きつけられた過酷な現実が、リヴァイの胸を蝕んだ。


どうして、何故、とザラを責める言葉ばかりが頭に浮かんだ。

死してなお想うと、死してなお傍にいると誓ったあの日のことを、一日たりとてリヴァイは忘れたことがなかった。

目に涙を溜めて懸命に微笑し、誓いの言葉を口にしたザラを、この世の何よりも美しいと本気で思った。

あの日の約束が今日までのリヴァイを奮い立たせ、そして生かした。



「……お前は捨てられるのか」


乾いた声が茫然と言った。


「お前はあの約束を、あの誓いを、お前は、お前は───」


気が付いた時には、机に伏せたザラの手首を掴み乱暴に起き上がらせていた。
逸らされた真っ赤な顔の、細い顎を掴んで強引に自分の方へ向ける。

二人の目が合う。
ザラはぼろぼろと涙を零し、懸命にリヴァイを睨んでいた。



「……許さない。俺は離れない。お前を離さない。死んだって逃さない、お前は、俺の───」


リヴァイはハッと言葉を切った。

ザラの肩がぶるぶると震えていた。
慌てて自身の手を凝視すると、掴んだ指が強くザラの肌へ食い込んでいる。

ザラの目に滲む色は恐怖の色であった。
その事実に気付き、リヴァイはようやく正気に戻った。

掴んでいた手を離すと、ほとんどよろけるようにして後ろへ退いた。

俺は何を、と思った。



『兵……』

「悪い」


ザラの視線に耐えきれずリヴァイは目を逸らした。
怯えるように見つめてくるザラの目をこれ以上見ていられる自信がなかった。


「……悪い、頭を……頭を冷やしてくる」


やっとの思いでそうとだけ言って、リヴァイは足早に広間を後にした。


落ち着こうと深く呼吸を繰り返しても、こちらを見つめるザラの目が脳裏にこびり付いて離れない。



───失いたくない。失えない。



リヴァイは低く呻いて目元を手で覆った。

黒々とした蟠りが、リヴァイの胸に墨をこぼしたように広がっていった。



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