第7章 歴史の動く時
『…にしたって、部下の使い方が荒いですよ。そろそろエルヴィン団長に泣きつこうかしら』
「なんだい惚気か?の一言で片付けられるだろうな」
『あーあー嫌だわ、私の人権はどこに行っちゃったんだろう!そろそろ違う人に乗り替えようかしら』
「昔、死んでも傍にいるって泣きながら誓ってたように思うが、俺の記憶違いだったか?」
『……っ』
リヴァイの言葉に、思わずザラは顔を真っ赤にして言葉を詰まらせた。
「あの時はまだ初々しい新兵だったな。よく泣いて、可愛かった」
『よく泣い……、なんです、今は可愛くないって言いたいの』
真っ赤な顔で懸命にリヴァイを睨んでくるが、その顔すら愛おしい。
リヴァイは思わず小さく笑って、赤く火照ったザラの頬に触れた。
「可愛いさ。……それに今も、よく泣くしな」
ふとリヴァイは、新兵だった頃のザラと、その上官であった自分のことを思い出した。
出会い方も衝撃だったが、その後も何かとリヴァイの目を引き、夢中にさせるのが上手な奴だった。
…無論、それを故意にではなく全くの無意識でやっているからタチが悪いのだが。
『兵長は変わりませんね。ずーっと人類最強の肩書きはあなたのもの。いつになったら、それ下さるんです?』
「欲しかったら自分の力でぶん取るんだな。あと、今は二人きりだぞ、ザラ」
『あ、そうでした。リ……』
名を呼び掛けて、思わずザラは途中で言葉を切った。
リヴァイが名前で呼ばれるのを心待ちにするように見つめてくるので、急に気恥ずかしくなったのだった。
『そ、そんな風に期待されると恥ずかしいからやめて下さい兵長、そもそも、そんな畏って言うものでもないじゃないですか』
「俺はとっくにお前の恋人のつもりだが、俺はいつまで二人きりの時もお前の上官でいればいいんだ? ザラよ」
リヴァイさんと呼ばせていても、気が抜けるとついいつもの癖でザラは嬉しそうに兵長と呼んでくる。
嫌なわけではなかったが、やはり二人きりの時くらい名前で呼ばれたいのが本音だった。
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