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【リヴァイ】君がため

第7章 歴史の動く時



よそ見していたザラは突如何かにぶち当たり、跳ね返された衝撃でそのまま地面に転がった。

あ、と誰もが顔を見合わせ、場の空気が瞬く間に凍った。


「…おい、これは何の騒ぎだ、ラドフォード」


言わずもがな、ザラがぶつかったのはリヴァイであった。
低い声音に寄せられた眉と、随分ご立腹の様子である。



『いや、あの…違うんです。ちょっと演劇の、練習してて。ねえオルオ?あれ?オル…ちょ、グンタまでどこ行くの、ね待って一人に、一人にしないでみん───』


言い終わる前に、リヴァイの鋼の鉄槌がザラの脳天へと落とされた。



ぎゃーっ、というザラの悲鳴を背中に、ペトラと廊下を歩いていたエレンは狼狽した様子でペトラの顔を窺うが、ペトラは涼しい顔をしていた。


「ザラさん、変わった人なんですね…」

「そうね、同じリヴァイ班を名乗ってることが少し恥ずかしくなったわ」


うんざりとした様子でペトラが言う。


「でも、皆さんから慕われてるのが、よくわかりますね」

「あら、そう思う?エレン」

「あれ、違うんですか?」

「…ま、悔しいけど正解ね。みんな彼女が、大好きよ」


言いながらペトラは苦笑した。
ザラのおかげで、随分班の雰囲気が和やかになっているように思う。


「…普段はあんな感じだけど、けっこう気を使ってふざけたりおどけたりしてるところもあるのよね。私たちがちょっと緊張してたの、目敏くあの子は気づいてたのかも。──まあ、物には限度ってもんがあるんだけど」


声を低めてペトラが言うと、隣のエレンが明るく笑った。


「凄い人懐っこい方ですよね」

「あー、もうその域に行っちゃったのねエレン…。そこまで来たらあとはトントンよ、ころっと惚れちゃう人も少なくないんだから、ザラには気をつけて」

「そっ、そうなんですか!?気をつけます…」

「何より、ザラの恋人が黙ってないからね。気をつけなよ」

「へえー、ザラさんの恋人、怖い人なんですね」


まさかその恋人が、審議の場で散々にエレンを蹴り飛ばし、無慈悲にも何度も掃除をやり直しにさせた、あのリヴァイ兵士長だとは夢にも思うまい。

エレンが真相を知るのは一体いつになるのだろうと、ペトラは小さく笑ってしまった。


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