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【リヴァイ】君がため

第7章 歴史の動く時



『さっきここへ入る時、中庭見た?』

「中庭…?いえ」

『やっぱり長らく人の手が入ってないと、草も木も相当な荒れ具合でね。掃除なんてお城の中だけかと思ったらさ、さっき私聞いちゃったのよ、兵長がボソッと、「明日は庭の掃除だな…」て独り言いってらっしゃるの』

「ええー!?あれ全部手入れするんですか!途方に暮れる作業ですね…」

『ねー、あの人も変なとこで拘りが強いから、振り回される方は大変だよねー』



三年の訓練を終えたばかりの新兵、それも、巨人化するなどという前代未聞の能力を持った自分相手に、気さくに笑いかけてくれるザラをエレンは不思議に思った。


脳裏に蘇るのは、兵法会議で審議に掛けられるまで幽閉されていた審議所の地下牢で、自分の見張りについていた憲兵団の兵士の姿だった。


彼らはエレンのことを化け物と称し、蔑み、憎しみのこもった目で睨みつけたのだった。



『ここに入る時と言えば!なんかオルオがぐちぐち言ってたね!大丈夫だった?』

「ああ、オルオさん…はい、大丈夫ですけど、それよりもオルオさんの噛みちぎられた舌の方が気になりました」

『あいつはね、よく噛むのよ。そりゃもう、すごい噛むの。一日平均三噛みくらいはするかな?』

「そっ…そんなするんですか!?」



オルオをはじめとするリヴァイ班の面子のほとんどは、未だエレンのことを信用してはいなかった。

笑顔で接しながらも、いつでも刀を抜く準備は整っている。



(でも、この子が…)


───本当に、巨人になるのか。



調査兵団の兵士達の間でも専らの話題と言えばやはりエレンのことで、人々は皆、期待と軽蔑とが入り混じった表情で、エレンについて言及していた。


リヴァイにエレンの存在を打ち明けられた時、取り乱したのはザラも同じだった。

仕方のないことだとは思う。

何せ、人類の宿敵であり調査兵団が命を賭して戦ってきた巨人が、まさか生身の人間と直接的な関わりがあるとは、思っていなかったからである。


同じ班に所属する兵士としてエレンと初めて正式に顔を合わせた時、ザラは正直なところ、少々面食らったのであった。


真っ直ぐな目をした少年だった。

ただの人間だ。
自分たちと変わらない、何の変哲もない少年が、緊張した面持ちで、立っているだけだったのだ。


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