第6章 そばに
こういう時、大抵リヴァイは話を聞かなかったことにしてザラから視線を逸らすと、黙々と元の作業へと戻った。
『ちょっ…なんで無視するんです、ここほら、早いじゃないですか、爪伸びるの』
「いやおま…うるせえ、律儀に聞いた俺が馬鹿だった、口じゃなくて手を動かせ、馬鹿」
『あー!そういう態度取るんですね!じゃあもう私も兵長の話聞くのやーめよ!』
「あ?なんでそうなんだ、あと兵長じゃなくて名前で呼べって何度言ったらわかるんだ」
『あ!また間違えちゃった、ごめんなさい』
「お前…そういうとこはやけに素直だよな…」
くだらない口喧嘩をし、最後にはいつも、二人して笑った。
数ヶ月も経つと、周りの目も気にせず、二人で食堂で食事をする様子も見られるようになった。
そんな二人を目撃しては、ハンジが二人の元へと赴き、嬉しいような拗ねたような態度で、二人にしか聞こえない声音で二人のことをからかったりした。
心穏やかに過ごすリヴァイとザラの様子を、エルヴィンをはじめとする幹部たちも、温かく見守った。
誰に対しても素っ気ない態度しか取らなかったリヴァイもザラに感化されたのか、人の話を聞き、笑う回数が増えた。
戦闘においてもザラは腕前をメキメキと伸ばし、誰もが認める兵団きっての戦力として成長した。
兵団全体を動かす作戦ではエルヴィンとハンジが、戦闘においてはリヴァイとザラがそれぞれ二本の柱となり、兵団を支えた。
徐々にリヴァイとザラありきの作戦も増え、エルヴィンもその腕を見込み、本来ならばたった二人の兵士に背負わせるはずではない重荷が二人に重くのし掛かることもあった。
責任感の重さから取り乱すかと思われたザラも、至極冷静に、エルヴィンに言われた通りの働きをし周囲を驚かせた。
大した人材であるとエルヴィンはザラを評価し、同じようにリヴァイのことも褒めた。
エルヴィンは、壁内へ戻り、一人部屋で泣くザラを知らなかった。
リヴァイだけがそのザラの姿を見、ザラの精神を危惧して、何度もエルヴィンに作戦の変更を掛け合った。
壁外調査でザラは懸命に戦い、多くの命を救い、また、多くの命を失った。
そうして、数年の月日が流れた。
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