第6章 そばに
二人きりでいる時に、相手に触れたがるのはリヴァイの方だった。
本を読んだり、紅茶を淹れているザラを後ろから捕まえては、首筋に口付けてよくザラを笑わせた。
そのままベッドへもつれ込む時もあれば、ピシャリと腰に回す手を叩かれ、拒まれる時も多々あった。
ザラはリヴァイの前でよく泣き、よく笑った。
リヴァイの前では子供のように取り止めのない話をよくし、リヴァイを呆れさせることもあった。
ある時は、夜、パタパタと足音を鳴らして元気よくリヴァイの部屋へとやってきた。
『兵長、見てください、これ!』
部屋に飛び込んでくるなり、ザラは手に掲げていたものをずいとリヴァイの眼前に差し出した。
月明かりに照らされ、白刃が鋭く光る。
ザラが持っているのは、立体機動装置に取り付けるブレードだった。
「っぶねえな、なんてもん振り回してやがる!ここに来るまでに人の一人や二人、殺めてねえだろうな」
『ちゃんと気をつけてきましたって!そんなことより、これ、見てください、どうですかこの刃、凄いでしょう』
若干たじろぎつつザラの顔を見つめていたリヴァイだが、言われてザラの待つブレードの刃をまじまじと見つめると、刀身が丁寧に研いであり、見事な仕上がりになっていることがわかる。
「…ほう、切れ味の良さそうな刃だな」
『でしょう!? これ、私が研いだんですよ!今日、たまたま技術班の人たちが研いでらっしゃるのを近くで眺めていたら、試しに一本どうですかって!』
「心の広い連中だな。んで、研がせてもらったのか」
『技術班の人たちに見ていただいたら、刀身の状態も十分だから、このまま次の壁外調査で使っていいって言われたんですよ!嬉しいなあ』
「…恋人を前にそんなきらっきらした目でブレードの話すんの、この兵団でお前くらいだろうな」
またある時は、朝、支度をしている時、おもむろに自分の左手をリヴァイに向かって突き出した。
『見てください、兵長』
「……、なんだ?」
『爪、見てください。何か気付きませんか?』
「爪…?」
『ほら、ここです、中指』
言われて、リヴァイはザラの左手中指を凝視する。
『中指だけ、爪伸びるの異様に早くないですか?』
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