第6章 そばに
それから、瞬くように日は過ぎた。
恋人同士になってからもザラとリヴァイはそれまでと同じように人前では旧友同士のように親しげに接し、よく笑った。
二人の交際を知っているのはエルヴィンとハンジ、ミケとナナバ、ペトラくらいで、あとの兵士は二人を単に仲の良い上官と部下として遠巻きから見守っていた。
ほとんどの日をザラはリヴァイの部屋で過ごし、まずはリヴァイの好みの紅茶の淹れ方を、それから、掃除の仕方、二人の時間の過ごし方を覚え、真っ当な恋人らしく同じ月日を歩んだ。
休みの日はタイミングをずらして兵舎を出て街へと抜け、行きつけの店で落ち合った。
大体先に到着しているのはザラの方で、リヴァイが店へと着くと、ザラはいつも注文した珈琲にもほとんど口をつけず、手元の本に没頭していた。
リヴァイが声をかけると、ぱっと顔をあげてにっこり笑う。
街を歩く時、ザラがリヴァイの腕に手を絡めてくるのがリヴァイは好きだった。
私服姿で会う恋人の姿は新鮮で、二人は一瞬壁外の巨人のことを忘れ、束の間の心休まる時を過ごした。
いつもリヴァイの部屋で寝ていたザラだが、壁外調査の前になると、十分に集中したいからと言って、ペトラとの共同部屋に戻っていった。
何があっても進み続けるというペトラとの約束と、何があっても振り向きはしないというリヴァイとの約束は継続しており、壁外調査の前になると、念を押すように約束を確かめ合ったりした。
壁外調査から戻ったあと、薄暗い部屋で明かりもつけず、ザラは泣いた。
散っていった命を思い、窓の外を眺めては、涙を流した。
壁外調査後の幹部での会議を終えリヴァイが部屋に戻ると、机の上に積んであった本や書類、万年筆や、クローゼットにかけてあった衣類、タオル、枕や掛け布団など、部屋中のものが全て床の上に無造作に投げつけてあることも多々あった。
決まってそういう時ザラは、割れた食器の破片や散らばった書類に囲まれて、床の上で身を小さくして眠っていた。
他の兵士たちが少しずつ仲間の死に慣れていっても、ザラだけはそれに慣れることがなかった。
仲間を失ったあとは、そうして我を失って、手当たり次第に物を壊した。
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