第6章 そばに
「ねえ……ザラと、どうなったのさ。仲直りはできたかい?」
リヴァイにほとんどもたれ掛かるようにして、肩を組みながらハンジが言う。
人に対しての距離が近過ぎるのは宴会の場に限らずハンジのいつものことだったので、それに慣れてしまっているリヴァイは特に拒絶の意を示すこともなく、その重みを受け入れた。
「なんだ、ザラと喧嘩でもしていたのか」
興味深そうに会話に入ってくるのは同じテーブルに座っていたエルヴィンである。
普段は固く真剣な面持ちのエルヴィンも、今日ばかりは頬をうっすらと上気させ、柔らかに笑っている。
「聞いてよエルヴィン!リヴァイったら、こおーんないい歳して、あんな若い子を振り回して、大変だったんだから!」
「おい…聞き捨てならねえな。あらぬ誤解を生むだろうが」
「なるほど、持ち前の不器用さで色々しでかしたんだな」
「うふ!さすがエルヴィン、理解が早くて助かるよ」
さも面白くてたまらないといった様子でハンジがクスクスと笑うので、リヴァイは憮然とした態度でそっぽを向いてしまった。
「あーあー、なんでこんな奴がモテるんだろ?ちょっと腕が立つからって、みんな夢を見過ぎじゃないかい?よーく目を凝らしてみると、リヴァイなんてほら、中年の、背の低い、おっさ…」
ハンジが言い切る前に、リヴァイが手に持っていた盃を真っ逆さまにハンジの頭上でひっくり返し、ハンジは頭から酒を浴びることになる。
「わー!?何するんだよ!」
「すまねえ、酔ってるみてえだ。手が震えちまってな」
「手が震えるだけでどうやったらこうなるんだよ!おうおう喧嘩か!?売られたんなら買うよ私は!」
「ハンジ、静かにしなさい…。リヴァイもリヴァイだ、嫁入り前の女性になんて事をする」
「嫁入り前の女性だぁ?そんな奴見当たらねえな、一体どこにいるだ、えぇ?」
「リヴァイ!言ったな!」
わかっていて白を切るリヴァイにハンジが飛びかかり、二人は椅子から転げ落ちて取っ組み合いになる。
見兼ねたエルヴィンが仲裁に入ると、側にいたミケとナナバも慌てて立ち上がり、二人を羽交い締めにして何とか引き剥がす。
「コラー!離せ!このチビには一発お見舞いしないと気が済まん!」
「落ち着けハンジ!周りの兵士たちのいい見せ物だぞ。兵団の士気に関わる、堪えろ!」
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