第6章 そばに
目が覚めた時、あまりの都合の良さにザラは思わず笑ってしまい、決まってそのあと涙を零した。
リヴァイを切望する思いが、そのまま夢に反映されているのだとありありとわかった。
リヴァイが傍に居て抱き締めてくれている今の光景が、毎日のように見る夢の光景とぴたりと重なるようにザラは思えた。
もうすぐいつものように目が覚めて、悲しい現実へと戻らねばならなくなるのではないかと思わず疑ってしまう程だった。
『……兵長』
不安になって名を呼ぶと、心配そうに顔を覗き込むリヴァイの視線とぶつかった。
すぐそばにリヴァイの目があった。
その目をじっと見つめ、夢でもいいとザラは思った。
リヴァイの心がすぐ傍に感じられた。
包み込んでくれる腕が温かかった。
それだけで、十分だと思った。
ザラは笑った。
小さな花が、朝露に濡れて、そっと咲くような笑みだった。
『好きです。どうしようもなく、好きです。どうか、お傍にいさせてください。……最期の、その時まで』
どちらの最期か、ザラは言わなかった。
リヴァイもまた、それを追及したりなどはしなかった。
ただリヴァイは黙って頷いて、それによってザラの心は確かに満たされたのだった。
居場所を求めた孤独な魂と魂とが、共鳴するように惹かれ合い、互いの存在を肯定し合うように、一つの場所に寄り添った。
そばにいる。
共にある。
いつか訪れる、別れの時まで。
死が二人を分かつ、その日まで。
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