• テキストサイズ

【リヴァイ】君がため

第6章 そばに



リヴァイを待つ部屋の窓辺に立ち、ザラはぼんやりと外の暗がりを見つめていた。

出会った時のリヴァイのことを思い出していた。


誤って池へと突き落としたその人は、恐ろしく、理解し難く、ザラにとってまったくの未知である人間だった。

それが今ではどうだろう。
出来るだけ関わりを持たず、平穏に過ごしたいなどと思っていた日が懐かしい。


毎日、気付けばリヴァイのことを考えていた。
ともに居る時の穏やかな笑みや、優しい響きを含んだ声や、抱き締められた時のリヴァイの香りが脳裏によみがえるたびに、締め付けられるように胸が痛んだ。

甘く、鈍く、そして思わず顔をしかめてしまうほど、重い痛みであった。

調査兵団に属する兵士達は、尊敬と畏怖の念を込めて、リヴァイの挙動の一つ一つを悟られぬようそっと目で追うものである。
人類最強という肩書きは、彼の為に誂えられたものであると心の底から信じて疑わなかった。

圧倒的強さ、圧倒的な存在感で、常に人を惹きつけてやまないリヴァイの瞳が、自分にだけ向けられる瞬間は異様なほどに心地よかった。
胸の奥がざわざわと波立つほどの快感を孕んでいた。

一度蜜の味を知ってしまうと、人というものは、驚くほどに強欲になるのだとザラは知った。
自分が考えているのと同じだけ、リヴァイにも想って欲しいと思うようになった。
あの笑みや、声や、近付くことを許されるのは、後にも先にも、自分だけがいいと真剣に考えた。

こんなにも狂おしく、誰かを自分のものにしたいなどと思うことは初めてだった。
そんな執着心を自分が持っているとは、生まれてこの方、本人すら知り得ないことだった。
そんな風にリヴァイの存在が、ありとあらゆるザラの感覚を変えていった。

はじめこそ、あまりの浅ましさに思わず自己嫌悪に陥るほどであったが、最近ではそれすらも受け入れられるようになった。


この世界に、時代を同じくして生まれ、生き伸び、そして出会った。

いつその命が終わるやもわからぬ過酷な状況の中で、そばに寄ることを許され、いつしか、心の支えとなった。

いつか、リヴァイのそばを離れる日が来ることもあるやもしれぬと思うと、じわりと涙が滲んだ。


こんな世界に生きる二人だからこそ、出会えた奇跡を尊び、身を寄せ合える瞬間を心に焼き付けようと思った。


.
/ 191ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp