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【リヴァイ】君がため

第6章 そばに



その日の夕暮れ、壁外から帰ってきた調査兵団を目にした途端、ザラは感情が抑えられず、その場にしゃがみ込んで顔を覆った。

団長であるエルヴィンの金色の髪が夕日に照らされて美しく輝き、その大柄な体躯の後ろからひょっこりと顔を出して笑うハンジ、そのまたさらに後ろに控えるリヴァイ、エルドやグンタ、オルオなどの同期の顔を見た途端、立っていられなくなったのだった。

巨人との戦闘で負傷したペトラは二頭の馬が引く荷馬車に横たわっての帰還となった。
医務室へと運ばれる彼女に寄り添い、手を握り、ザラは黙って涙を流した。

ペトラはそんな様子のザラを見て小さく笑い、嗚咽に震える頭を優しく撫でた。

出立の前、浮かない表情のザラに向かって、ペトラは約束してと言ったのだった。

「…お互い、どんな最期になろうと、どちらかが先に逝くことになろうと、絶対に希望を失くさず、前に進み続けましょうね。……約束よ」

そう言ってザラを抱きしめ、ペトラは戦地へと向かったのだった。



「…やだ、そんな泣くことないじゃない。私生きてるのよ、ザラ。…笑ってよ」

巨人の攻撃にやられたのであろうか、肩口からかなり出血したらしいペトラは、頬に自分の血をつけたまま、弱々しく笑うのだった。
何とかザラを慰めようと笑ってよなどと口では言いながらも、ペトラの胸中には、諦めにも似た気持ちがあった。

ザラは大切な人を失う辛さを知っている。
一人、ここで兵団の帰りを待っていたザラの心境を思うと、それ以上簡単な慰めはかけられなかった。

最悪な未来ばかりが頭をよぎり、不安で不安で堪らなかったのだろう。
押し黙ったまま涙を流すザラの様子が、それを物語っていた。


「…兵長に、言われたわ。この怪我を負った時、荷物輸送班の荷馬車まで運んでくださったのは兵長だったの。あんまりにも血が出たものだから私、びっくりしちゃって。サーッと血の気が引いてくのがわかって、危うく気絶しそうって時に、リヴァイ兵長が厳しいお顔でおっしゃるの、気張れ、って。お前が倒れると、ザラが悲しむからって。…無茶な話でしょ?」

思わずペトラは笑ってしまった。
リヴァイの言ったその無茶な話に背中を押され、何とか意識を繋ぎとめたペトラだった。

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