第5章 願いはただひとつだけ
「…………」
しかし、は考え事をしながらも、ふとある違和感に気づく。
そう、なんとなくではあるが、リヴァイが今朝から口数が少ないように感じるのだ。
そういえば、今朝はリビングでどんな会話をしただろうか…
日中はオフィスで何を話しただろうか…
思い返すと、会話らしい会話がなかった。
今もそうだ。
もともと口数の少ないリヴァイだが、それなりに世間話もする。
車の中でもそれとなくなにかしらの話題がでるのだが、今日は行きも帰りも沈黙が続いている。
は特に沈黙が気まずいわけではなかったが、いつもと違う雰囲気に少し戸惑った。
リヴァイは信号や混雑で停止すると、スマートフォンの画面に視線をむけ何か通知のようなものをチェックしている。
運転中にそんな行動をするのも初めて見る。
はそんなリヴァイになんとなく声をかけることができず、ただただ自宅への到着を待つことしかできなかった。
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「運転、ありがとうございました…」
マンションに到着し地下駐車場からエレベーターでリヴァイの部屋の階まで上がるとようやく帰宅だ。
部屋に入り、コートを玄関のハンガーにかけ、手を洗う。
いつもはだいたい帰りの車で夕飯の話題がでて、必要であれば買い出しをしてから帰宅。帰宅後は2人で夕飯の準備をするというのががリヴァイの家に転がり込んでからのルーティンになったいたが、今日は車で夕飯に関する話題があがらなかったために、まっすぐ帰宅となってしまった。
さて、夕飯はどうするか…
何か作れる材料はあったかとが冷蔵庫を開いた時だった。
「…」
リヴァイがの名を呼んだ。
短いようで長いようにも感じた沈黙が終わりをつげるのだろうか。
はリヴァイの話に耳を傾けた。