第2章 冬の雨
「…………」
ポストが空ならこのままエレベーターのボタンを押し、部屋に帰るまでだ。
しかし、リヴァイはコンビニの入り口に立っていた女の事が気になっていた。
店に入る時、上着も着てない上に全身びしょ濡れの様に見えた。
そして店から出る時、その女の足元を見ると、靴ではなく、家の中で履くようなスリッパを履いていた。
最初は誰かの迎えを待っているのかと思ったが、明らかにおかしい。
顔はよく見えなかった。
しかし、自分の知り合いで無い事は確かだ。
何処の誰かは分からぬが、気になって仕方がない。
たかが女1人だ。
しかも顔がよく見えなかったため、人目を惹くような美人だったから気になった…というわけでもない。
言いよってくる女が程よく周りにいたリヴァイにとっては、その辺にいる女の1人なんていちいち気にする事なんて無いはず。
だがどうした事か、あの女が気になって気になってエレベーターのボタンを押す気にはなれなかった。
しかし、気になったからと言ってどうするのだ?
声をかけて家に上げるのか?
本当に誰かの迎えを待っていたのだとしたら、自分は不審者扱いされ、ヘタをすれば110番だ。
そんなのは勘弁だったが自分の脚は部屋に帰る事を拒否している。
「はぁ……」
困ってる事が無いか聞くだけなら問題ないだろう。
もし困っている事があっても、不審者がられたら近くの交番の場所を教えてやればいい。
リヴァイはため息を1つつくと、コンビニの方に逆戻りをした。
まだいるだろうか…
柄にもなく心臓が速度を上げて拍動している。
そんな自分に心の中で舌打ちをしながらコンビニの入り口を見ると、その女はまだ立っていた。
両腕を力無くブランと下げまたま俯いて……
コンビニの入り口などたいして雨宿りにはならない。
申し訳程度の軒下に立っていてもふきこんだ雨が容赦なく身体を濡らしていく。
「おい…何か困っている事でもあるのか…?」
リヴァイは傘をさして女のもとまで行くと、声をかけた。