第2章 冬の雨
その声にピクリと反応をした女はカタカタと肩を震わせると、ゆっくりと顔を上げた。
「!!!」
そして女はリヴァイの顔を見ると身体をヒクつかせ、大きく目を見開いた。
「……??」
声をかけられて驚いたというより、自分の顔を見て驚いた様に感じたのは気のせいだろうか。
女はただ驚愕の表情をリヴァイに見せるだけで何も言わない。
リヴァイは次に何て声をかけようか頭の中でアレコレ考えていると、女の出で立ちが明らかにおかしい事に気づく。
まず、この気候で上着を着ていないというのは、やはり見間違いでは無かった。部屋着のようなゆったりとしたチャコールグレーのワンピースに足元は素足でスリッパを履いていた。
それに女は手に何も持っていなかった。
小さなハンドバッグ1つすら持っていない。
やはりどう見たっておかしい。
「俺はこのマンションの住人だ。手荷物を盗まれたのか?困っているなら最寄の交番まで案内してやっても……」
そう言いかけると、女はいきなりリヴァイの両腕を掴み、首をブンブンと横に振った。
「イ…イヤです……」
「…っ?!いったいどういう事だ…」
さっぱり状況がつかめないリヴァイは眉間にシワを寄せる。しかし、女の口から発せられた言葉は耳を疑うものだった。
「お…お願いです……家に上げて頂けませんか?」
「はぁ…?!」
「…私は、逃げてきたんです……」
「逃げてきた…だと?いったい何からだ…俺に犯罪者匿う趣味はないぞ。」
「違います!!罪を犯して逃げているのではありません……」
雨のせいで濡れている頬が涙なのか雨なのか分からない。
しかし、リヴァイは女の装いとこのセリフをよく照らし合わせると、1つの答えが見えてきた。
「もしかして…男の暴力とかから逃げてきたのか…?」
「……!!!」
すると、女は力なく頷いた。