第4章 記憶と真実
「あ、ありがとうございます…!!」
少しでも気を抜くと、体調が悪化してしまいそうな雰囲気を自身の身体から感じていたは一心不乱に翻訳の仕事を片付けていった。
ひとまずリヴァイが外出するまでの、第一段階はなんとかクリアできた。
だが、ここで気を抜いてはいけない。
外出中に自分が倒れれば、エルヴィンは必ずリヴァイに電話をかけてしまうだろう。
どんな相手と商談していようが、エルヴィンは電話をかけてしまうだろうし、リヴァイは商談中だろうと必ず戻ってきてしまう。
そう、リヴァイは必ず戻ってきてしまう。
エルヴィンの行動も、リヴァイの行動も、わかってしまうのに何もできない自分に苛立ち、少しネガティブな思考になってしまったが、そんなことを考えている時間などない。
今は1分1秒無駄にできないのだ。
一旦落ち着こうと、は出されたコーヒーカップを両手で優しく包みこむ。
コーヒー独特の香ばしい匂いがフワリと香り、深く吸い込むと少し頭が冴えてきた。
「私もリヴァイと一緒で紅茶派なんだけどね、たまたまいいコーヒー豆を貰ったから今日はコーヒーにしてみたよ。味はどうかな?」
ポーションミルクを1つ入れてからカップを傾けると、スッキリとした爽やかな苦味がの口内に広がった。
「美味しいです!私、あんまりコーヒーは飲む機会なかったのですが、飲み慣れていない私でもとても飲みやすいです。ありがとうございます」
「そうか、それならよかった。帰ってきたらリヴァイに勧めてやってくれ。リヴァイはコーヒーはあまり好まないようだから私が勧めても眉間に皺を寄せるだけなんだ。君が勧めればリヴァイも喜んで試してみるだろう」
「はい、是非勧めてみます」
予想外に美味しく感じたコーヒーのお陰で少し頭の冴えたは、とにかく今のうちだとばかりに次々と仕事を片付けていった。