第3章 揺れる記憶
「………」
脱衣所の扉がパタンと閉まると程なくしてシャワーの音が聞こえてきた。
ザーザーと勢いよく流れる流水音を聞きながらは少し苦しそうにため息をついた。
リヴァイに対して抱いている特別な想い。
打ち明けてしまいたかった。
けれど、今のリヴァイではきっと駄目なのだ。
でももう…もう限界だ。
何が正解かわからない。
どうすれば負の連鎖になっている今の状況から打開できるのかわからない。
唯一わかっているのは…たくさん経験した不正解だらけの過去。
同じ失敗を繰り返さないために今できることは、早まらないということだけだった。
「…早く支度を済ませなきゃ……」
溢れてきそうな涙をグッと堪え、はリビングに戻り夕食の準備を再開させた。
――――――――――――
翌日、リヴァイはいつもより早く起きて身支度を済ませると一度外に出て辺りを見回ってみた。
集合ポストやマンションまわり、1階のコンビニ等、思い当たる場所は全て目を光らせたがの元恋人らしい姿は見られなかった。
の話によれば身長は180センチ、体型は細身で筋肉質。髪の毛は少し明るめに染めている短髪だと言っていた。身長は日本人の平均身長と比べるとやや高めだが、それ以外は特に目立つ特徴がないためこの辺を歩いていても、リヴァイだけで特定するのは難しそうだ。
しかし、こうでもして警戒しておかないと後々大きな後悔をしそうでリヴァイは怖かった。何故こんなにものことを守りたいのか自分でもわからない。異常な程だと言っても過言ではない。勿論自覚もしている。
「………」
答えはすぐに出そうにないが、今は身長の高い男全てがみな容疑者なのは確かだ。
あらかた見回るとマンションの自室へと戻り、と池袋のオフィスに出勤するため準備の続きにとりかかった。