第3章 揺れる記憶
「リヴァイさん……」
常に冷戦沈着であまり表情を変えないリヴァイが、1日中自分が無事かどうかで気を揉んでいたなど信じられない。
しかし、玄関を開けて自身と目が合った時のあの安堵した表情。
抱きしめられた時の腕の力。
握られた手から伝わる温もり。
本当にリヴァイは自身の無事に心底安堵したのだろう。嘘偽りのない真っ直ぐな想いにの胸は複雑にざわめいてしまう。
心の中にある特別な“想い”を打ち明けてしまいたくなる。
もう、隠していたくない…
心の中でそう呟くと、それが引き金になったかのように衝動的にたくさんの言葉が喉元まででかかったが、うまく喋れない。
「?」
なかなかいい返事を聞かせてくれないに焦れてリヴァイが名を呼ぶと、ハッと我に返る。
「す、すみません…リヴァイさん…その…私…」
「……?」
「私のためにすみません…お言葉に甘えて…明日からはご一緒させていただきます」
「そうか、それなら俺も安心だ。帰宅早々にあれこれとすまなかった。あぁ、それと…食事の支度…してくれたのか?」
長い髪を後ろに1つに結んでいる姿と、開かれたリビングの扉から香ってくる温かい匂いに、リヴァイはが夕食を作っていたことに気づいたようだ。
「は、はい…1人ですることもあまりなかったので…冷蔵庫の中にあるものを使って簡単にですが…用意してました…」
「了解した。すぐに風呂を済ませるから待っていてくれ」
リヴァイは握った手を照れくさそうに離すと、シャワーを浴びにバスルームへと直行した。