第3章 揺れる記憶
夕刻。
「エルヴィン、今日は先に帰る。戸締まり頼んだぞ…」
「了解だリヴァイ。早く帰ってやれ。」
いつもは残業などあってないようなもの。
仕事モードの日は日付をまたごうがオフィスにいるし、乗り気でない時はさっと片付けて上がるという、フリーならではの特権を活かした労働をしていたが、今日はそれどころではなかった。
の様子が気になって気になって仕方なかったリヴァイは今日やっておかなければならない仕事を、昼食も休憩もとらずひたすらに片付けると、飛び出すようにオフィスを出ていった。
最寄りの駅から出てマンションまで全速力で走る。
に暴力を奮っていた男がどんな野郎かは知らないが、ここを嗅ぎつけられてはいないだろうか…絶対に扉をあけるなと言ってきたが、宅急便を装ってインターホンを押されたりはしてないだろうか。
こんなに不安にかられたのは今まで生きてきた人生で初めてかもしれない。
しかし今はの無事な顔を見なければ安心できない。
リヴァイはマンションまで着くと、エレベーターを待っている時間も惜しく、階段を勢い良く駆け上がった。
ーガチャー
「……!!」
鍵を開けて靴を脱ぐと、リビングからは何やら生活音がする。
急いで家に上がると、リビングの扉が開き、が顔を出した。
「リヴァイさん、おかえりなさい!昨日お休みにさせてしまったので…もっと遅いお帰りかと思ったのですが、早かったんですね?」
はリヴァイの帰りが早くて嬉しかったのだろうか。
その顔は、フワリと微笑み、喜んでいるように見えた。
「…………」
「リヴァイさん?走ってきたんですか?」
寒い冬だというのにリヴァイのこめかみにはうっすらと汗が滲んでいた。
そして心なしか息を上げているようにも見えたは不思議そうな表情でリヴァイに問いかけた。