第11章 帰還3
次第に賑わしくなる城内。
早朝から武将達が登城し、皆慌てて、掃除やら朝餉の準備をしている。仕方がない。予期せぬ武将達の登城。
いつもよりかなり早いが、文句など言えないのだ。
そんな慌ただしい廊下を政宗は、足早に歩いていた。
と、正面から来る人物に目を細める。
「家康殿……」
そう呟いた政宗に、家康の眉間に皺が寄る。
「政宗か。珍しく早起きだな」
さらっと嫌味を言う家康に、今度は、政宗の顔が引き攣る。
いや、それだけではない。今、呼び捨てにされたのだ。
「腹を立てるなよ。俺の事も『家康』で良い」
顔に出ていたのだろうが、それを見て薄く笑う家康に、苛つく政宗。
「分かった。俺も『家康』と呼び捨てにする。……しかし、急に砕けた話し方になったな」
「は……? 昨日からだぞ。信長様からもジジくさい話し方をするなって言われたからな」
「ああ、そうだったな。ところで、家康は、こんな朝早くどうした?」
さも当たり前のように砕けた話し方をする政宗。
良いとは言ったが、一応家康の方が格上。
小さく溜め息を吐き、問いに答える。
「信長様のところだ。昨夜あつ姫様を見つけて、城にお連れしたから、その報告……」
「……っ‼︎ あつ姫様、見つかったのか!」
家康の両肩をガシッと掴み、大声を出す政宗に、若干引き気味になる。
「近いし、五月蝿いぞ、政宗」
「あ、ああ……すまん」
言われて、両手を離し一歩下がる。
だが、早く話を聞きたい政宗。
「家康、あつ姫様はご無事なのか? いつ見つけた? 何処にいらっしゃったんだ?」
「政宗……質問が多いな。あつ姫様は、お怪我もなくご無事だ。細かい話はしない」
「……お前、案外、意地が悪いな。まあ良い。あつ姫様がご無事なら問題ない。……そうか、それなら、信長様のご機嫌伺いに行っても大丈夫だな」
家康の思った通り、政宗は、天主に向かっていた。
まあ、自分の歩いていた廊下は、天主へと続くのだから、分かって当たり前なのだが。
「止めた方が良い。信長様はまだ機嫌が悪いぞ。それでなくても、政宗に対してのお怒りは解けていない。……ああ、それに、あつ姫様と朝餉らしいから、邪魔をするとお前への怒りが増すだけだ」
家康の言葉にガックリと項垂れる政宗だった。