第10章 帰還2
いつの間にか袴の紐を解かれていたのだが、政宗は気付かなかった。
いや、それどころではないと、気付けなかったのだ。
そんな状況の中、焦った政宗は、己の物を咥えている女中の腕を掴み、引き寄せた。
「俺だけが気持ち良くてもダメだろ」
そう言うが早いか、引き寄せた女中ともう一人の女中の茂みに手を忍ばせた。
いや、はっきり言って気持ち良くはなかった。
だが、政宗の自尊心から、女達を先に果てさせれば、その場をしのげると思っての行動だった。
器用に両手を使い、秘所を指で刺激すると、呆気なく果てる女達。
政宗は、さっさと自分の着物を直すと女達に着物を投げた。
「お前達、さっさと着物を着ろ」
「政宗様? 今日はどうされたんですか?」
「そうです。私達だけ果てても……政宗様が……」
「今日から仕事が楽になるので、時ならありますよ?」
「はぁ……? 楽になる、だと?」
女中の言葉を聞き、政宗は怪訝な顔をしながら思わず呟いた。
何がどうしたら仕事が楽になるのか?
城で働く者達は、給金は高いが仕事の量も半端がない。
無論、仕事は細かく振り分けられているが、一人が分担する量は、かなり多い。
この安土城では、仕事の量は平等。
楽になる事などあり得ないのだ。
口だけで指図する者は、楽をしているとみなされ、首が飛ぶ。
それを知っているはずであろう女中達。
いや、よく考えれば、今、この時も忙しいはずだ。
「お前ら、仕事はどうした?」
「えっ……? あの、昨日から新しい下女が入って、井戸まで行く仕事は、その娘に任せる事になったので、私達の仕事が減ったんです」
「そうなんです。調理前の野菜を洗うのも井戸ですから、私の仕事が減りました。勿論、調理後の洗い物も任せるので、かなり楽になりましたよ」
笑って話す女中達に、政宗は、顔を歪めた。
そう、二人は台所の女中。
『楽になる』とは、あつ姫に仕事を押し付けるという事なのだ。
それを思い出した政宗は、言葉を絞り出す。
「……お前ら、首が飛ぶぞ。……早く仕事に戻れ」
政宗は、何を言っているのだと、女中達は顔を見合わせた。
だが、先程と打って変わり、彼の視線は冷たい。
重ねて、ピリピリと殺気まで醸し出す政宗。
訳が分からない女中達は、動揺したのだった。