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夢幻の如く

第8章 それぞれの苦悩3


姿は見えないが、私の周りに続々と何かが集まって来た。

「何で隠れてるんだ? みんな出ておいで。姫は、何もしないよ」

と、ガサガサと様々な動物が姿を現した。
熊に猪、鹿、猿、更には大陸から渡って来た虎。何でも有りだ。
だが、その動物達は、普通よりもかなり大きかった。

「虎とは珍しいな。……しかし、山犬は居ないんだな。まあいいや。みんな、姫の側においで。夜は冷えるし、固まって寝よう」

そう言うと、虎が私を囲うように座り、他の動物達も、押し合うように座っていた。
普通よりも大きい虎は、私をすっぽり納めていた。
私は、動物達と少し話していたが、虎の毛が気持ち良く、またウトウトしていた。

「あつ姫、あつ姫……目を覚ませ。あつ姫……」

「んん……誰だ……?」

私を呼ぶ声が聞こえた。
しかし、疲れきっていた私の瞼は重い。
なかなか目を開けられない。

「あつ姫、目を覚ませ」

命令口調に段々と腹が立ち、私は目を開けた。
そこには、全身を隠すような真っ白なマントを羽織った、背の高い者が立っていた。
フードを目深く被り、顔は見えない。
しかし、その者が纏う気は黄金色に輝き、周りにいた動物達は、ブルブルと震えていた。

「貴様、誰だ? みんなが怖がってる。姫に用があるなら、早よう話せ」

「……あつ姫、俺を覚えていないのか……?」

「……? 姫の知り合いか? その姿……この時代の者じゃないな。悪いが、記憶が混乱して、よく覚えておらん。すまんな」

「……! ククッ、これは貴重だな。あつ姫が謝るとは……」

目の前の男は、腹に手を当て、笑いを堪えている。
当然、私は、それを見てムッとした。

「貴様、失礼だな。姫だって謝るぞ! それより、本題を言え」

「ククッ、すまんすまん。お前と普通に会話する事自体が久しぶりなんでな」

(久しぶり? こいつ本当に知り合いか?)
訝しげな表情で男を見るが、顔も見えず、男が何を考えているのかも分からない。
だが、動物達に危害を加える様子はないので、男の言葉を待った。
しかし、男は何か考えているようで、話をしない。
当然、私は苛つき始めたのだった。
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