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夢幻の如く

第7章 それぞれの苦悩2


信長は、仕方なく宴に顔を出そうと、居室から出ようとしていた。
すると、夜だと言うのに、窓から一羽の小鳥が入って来た。
大吾が放った鳥だ。
すぐに気付いた信長は、鳥の足に巻き付けてある紙を取り外した。

「ご苦労だったな。主人の元へ帰れ」

信長に返事をするかのように、ピーッとひと声鳴き、闇夜に消えた。
それを確認する事なく、信長は、大吾からの手紙を読み、グシャッと握り締めた。

「あつ姫が城から出ただと……? クソッ、手遅れになる前に見つけないと……大吾頼むぞ」

外を見ながら、信長は呟いた。
それが、宴に行く前の出来事だった。


一方、大吾は、大手道の分かれ道で少し悩んでいた。
一本は、城下へ続く道。
もう一本は、安土城の裏手、湖へ続く道。
そして、もう一本、山に入る道。
当然、あつ姫なら山に入って身を隠すだろう。
だが、下女と一緒なら山には入れない。怪しまれるからだ。
すると、残すは城下への道か、湖への道。
意を決した大吾は、道を走り下って行った。

その頃、湖の畔の食事処では、店じまいをし、老夫婦が家路を急いでいた。
老人の背には、スヤスヤと寝息を立てるあつ姫がいた。
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