第7章 それぞれの苦悩2
「あつ姫は、まだ見つからんのかっ!」
「申し訳ございません。……護衛達が城内を隈なく捜索しておりますが、足取りすら掴めていません」
「あつ姫は、まだ力を使えんはずだ。自分の事を半分も分かっておらん。クソッ!」
天主で怒鳴り散らしているのは、信長だ。
そして、如月は、苦悶の表情で現状を報告していた。
苛つく信長は、ジッとしていられなくなり、自ら捜索に出ようと襖に手をかけた。
と、襖が勢いよく開いた。
息を切らして襖を開けたのは、政宗だった。
「の、信長様……ハァハァ……」
「政宗、どうした? あつ姫を見つけたのか?」
信長の問いに、政宗は、ガバッと土下座をした。
その行動に訝しむ信長。
すると、何とか息を整えた政宗が口を開いた。
「あつ姫様は、台所の下女として働いておられたようです」
「下女だと……? それであつ姫は見つけたのか?」
政宗は、畳に頭を擦り付けるくらい、更に頭を下げた。
「申し訳ございません! 下女だと思い、話をしましたが、布で顔を隠しておられ、気付きませんでした」
「貴様……あつ姫を下女と間違うとは……殺してやるっ!」
「信長様っ! いけません。伊達様に罪はございません。それより、 あつ姫様が城を出る前にお探ししなければなりません」
怒りに任せ、抜刀した信長を、如月が何とか止めた。
確かに政宗には罪はないが、話をして気付かなかったのは、政宗の落ち度だ。
しかし、今はそんな事を言っていられない。
「政宗、貴様は大広間へ行き、宴を始めるよう秀吉に伝えよ。俺が参加しなくとも勝手に進めよ。俺が貴様を殺す前に行け」
「ははぁっ!」
青ざめた政宗は、足早に天主を去った。
そして、如月も、あつ姫が居た台所へと、急ぎ向かった。
残された信長は、窓に近付くと大きな溜め息を吐いた。