第6章 それぞれの苦悩1
如月に横抱きされ、いつの間にか眠ってしまった。
次に目覚めた場所は、襖の前だった。
「あつ姫様、お目覚めですか? お部屋に着きましたよ」
「ここで夕餉まで休むのか……?」
「はい。とりあえず、中に入りましょう」
如月は、私を横抱きしながら、器用に襖を開け、中に入ると更に部屋の中を進み、もう一つの襖を開けた。
「全く、この部屋もか……」
部屋に入るなり、盛大な溜め息を吐いた。
大広間もかなり豪華な作りだったのだが、連れて来られた部屋も、襖や壁は派手な金碧障壁画で、四季の花々が描かれていた。そして、天井は、折上格天井になっており、襖絵に合わせて草花が描かれていた。
また、様々な調度品が置かれていたが、全て豪華な蒔絵だった。
「誰の部屋か知らんが、広過ぎだ。調度品などが無ければ、大広間だな。……しかし、この時代にシャンデリアとは……」
「ほほ、あつ姫様、シャンデリアは、このお部屋だけですよ。近々、更に大きな物が大広間に設置されるそうですが。ちなみに、電気ではありません」
「如月、電気ではない事くらい分かるわ。……全く……シャンデリアとは、何を考えておるんだか……」
呆れながら、その場に座ると、また溜め息を吐いた。
考え事が沢山あるのに、余計な物まで存在している。益々考え事が増えたのだ。
脇息にもたれながら、眉間に皺を寄せていると、如月が、沢山の手拭いを用意していた。
「あつ姫様、今は余計な事はお考えにならないで下さい。さあ、お身体を清めますね」
如月は、慣れた手つきで私のワンピースを脱がすと、身体の隅々まで手拭いで拭いていた。
誰が持って来るのか、桶に入った湯が汚れると、襖の向こうに綺麗な湯の入った桶が置かれていた。
「姫様、お身体は清めましたが、足首の傷は、如何いたしますか?」
「ん……? ああそうだなぁ……傷は夜には消えるが……」
「……何者っ!」
話していると、急に如月が大声で叫んだ。
私は特に気にしていなかったのだが、激しく反応する如月に、きょとんとした。
彼女は、襖の向こうを警戒し、背中に手をかけていた。