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夢幻の如く

第4章 二人の関係2


秀吉は、困っていた。
戦や政とは違う。頭が回らない。
皆の冷たい視線。
己の主君が、なぜ、ここまでするのか分からない。
若い頃から、信長には、色々な無茶を言われてきたが、その度に上手く立ち回る事が出来た。
しかし、今日は、いつもと勝手が違うのだ。
押し黙り、考えていると、信長が痺れを切らした。

「秀吉、娘は高熱を出し、衰弱しておる。連れ帰った時に意識がなかったが、それを牢に入れ、三日も放置するとは……しかも、城の牢屋の中でも、一番劣悪な下の牢屋。あそこは、俺の指示がない限りは、入る事を禁じておるはずだ」

「……っ、し、しかし、素性も知れぬ者です」

ビクビクしながらも、反論する秀吉。
と、家康が、またも声を荒げた。

「秀吉殿っ! あつ姫の素性なら」

「家康っ、黙れっ!」

信長が、家康の言葉を遮った。
彼が何を言おうとしているか、心を読んでしまった為だ。

「申し訳……ございません」

家康本人も、心を読まれた事に気付き、それ以上は言わなかった。
大広間は、異様な雰囲気になっていた。



その頃あつ姫は、はっきりと意識を取り戻していた。
しかし、豪華な折上格天井を見ているだけで、何も話さなかった。
心配になった大吾は、オロオロしてしまい、寝所の中を歩き回っていた。
彼の癖だ。歩き回る事で、己の気持ちを落ち着かせる。
と、あつ姫が大吾に視線を向けた。

「大吾、私を織田信長の所へ連れて行け」

「……っ、あつ姫様……でも……」

「大吾、大丈夫……織田信長の所に行くまでは、目を瞑っている。何も見ない。だって、織田信長に会う前に、元の時代に帰れるかもしれない。だったら、この時代の物は見ない」

「……⁈ 姫様、時を超えた事を覚えているのですか……?」

「大吾……今は、話したくない……それより、早く連れて行け」

「御意のままに」

大吾は、あつ姫に打掛けをすっぽりと被せ、横抱きすると、信長の元へと向かった……




どこをどう歩いているのか、大吾は、私に負担がかからないようにしている。彼の腕の中でも揺れを感じなかった。
その為、私は、再び眠りについたのだった。
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