• テキストサイズ

夢幻の如く

第4章 二人の関係2


老臣二人が退出し、大広間は、本当の側近中の側近だけになった。
ただ、丹羽長秀と滝川一益、そして佐々成政の三名は、残しておくはずだったが、直前の報告で、致し方なく側近から外したのだ。
残ったのは武将五人。実際、今の信長の力に耐えられるのは、この五人だけというのも事実だった。
そして、本当の極秘の軍議が始まった。
信長は、皆を見回すと口を開いた。

「さて、秀吉。先程の娘に関して、弁明があるなら申してみよ」

「は……?」

当然秀吉は、議題が自分の事とは、全く予想しておらず、素っ頓狂な声を出してしまった。
だが、瞬時に理解した。
この極秘会議は、自分が吊るし上げられる為のものだと。
そして、頭を必死で回転させた。

「秀吉、早う申さぬか」
急かす信長。

「……っ、は、はい。あの娘ですが、あのような場所に現れた事で、敵方の間者と判断し、牢に監禁しました」

「ほう……間者とな? ゆえに牢に三日も放置し、食事も与えなんだということか。……秀吉、それは、貴様の判断だな? 俺が命じた事を覚えておるか?」

「はっ! 『娘を任せる』と、ゆえに尋問する為に監禁しました。また拷問にかけようと鎖で繋ぎましたが、娘が小さく、両手を鎖で吊るす事は出来ませんでしたが」

「……何……? 拷問? 鎖で繋いだだと?」

「はいっ! 危険ですから、最も厳重な下の牢に入れました」

やけに元気よく答える秀吉に、信長の顔色が変わった。
確かに信長の指示は、どうにでも解釈出来る。
が、しかし、相手は見るからに子供だ。それを秀吉は、鎖で両手両足を繋ぎ、拷問しようとしていたのだ。
これには、光秀と家康の二人も顔をしかめた。

「秀吉殿、鎖で繋ぐなど、やり過ぎではないですか!」

いつもは黙っている家康が、声を荒げた。
光秀も言いたい事はあったのだが、秀吉を横目で睨むだけで、何も言わない。
嫌な雰囲気になり、秀吉は、冷や汗をかき始めた。
と、ここで、政宗が秀吉を見た。

「あーー、秀吉殿。娘を牢屋に入れたと聞こえましたが、一体、何の話やら、某には分かりかねるのだが……」

「い、いや、そのだな……お屋形様が戦場から連れ帰られた娘の事なんだが……」

「ほほう、信長様が……」

それを聞いただけで、政宗は理解した。
この極秘の軍議が、秀吉の為のものだと。
当然、面白くなると思い、政宗は口角を上げたのだった。
/ 111ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp