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夢幻の如く

第4章 二人の関係2


光秀は、寝所に行くのを諦め、信長と家康の後ろを肩を落として歩いていた。
結局、信長は、専用の通路を使わず、家康達と軍議に向かっていた。

戦や鍛練に関係なく体力を使い、家康は、不機嫌極まりなかった。

「光秀さん、あんたのせいで、無駄な体力を使った。いい大人が、追いかけっことか、あり得んわ」

家康は、苛つくあまり、光秀に当たり散らすが、当の本人には、全く聞こえていない。
益々苛つく家康。
まだ何か文句を言おう考えていた。
と、信長が突然笑い出した。

「ハッハッハッ! 家康、貴様、随分と砕けた話し方になったな。光秀もだが、家康の事を呼び捨てにしておったな」

「……‼︎ そういえば、呼び捨てにされてました。まあ、俺の方が年下ですから、呼び捨てでも構いませんよ。俺も光秀さんには、敬語を止めます」

「ククッ、好きにせよ。光秀とて、それくらいの事、気にはせん。まあ今は聞こえておらんがな。さて、着いたな。秀吉を吊るし上げるか」

怒っているはずの信長は、悪い笑みを浮かべ、大広間に入って行った。
家康は、光秀の腕を引っ張り、急いで自分達が出入りする襖に向かった。



信長が上座に現れると、皆が一斉に拳を床に付け頭を下げた。
大袈裟なほどの所作で、上座に座る信長。

皆は、信長の許しが無い為、頭を上げる事が出来ない。
どうしたのかと、皆が思い始めた時、襖が開き家康と光秀が大広間に入って来た。

「皆、面を上げよ。……家康と光秀は、さっさと座れ」

家康は、光秀を座らせると自分も空いている場所に座った。
大広間に集められたのは、信長の側近達。
襖側左翼には、前から丹羽長秀、滝川一益、柴田勝家、佐々成政、前田利家。
障子側右翼、木下秀吉、明智光秀、徳川家康。そして、老臣の林秀貞と佐久間信盛。また、特別に秀吉の家臣である石田三成が、末席に座していた。

武将達は、大広間の中段と呼ばれる場所に座り、各々の家臣と信長の直参の家臣達は、下段に横並びに座っていた。

信長は、険しい顔をして皆を見回すと、口を開いた。

「最初に言うておく事がある。……秀吉、本日より『木下秀吉』改め『羽柴秀吉』と名乗れ」

懐から折り畳まれた紙を取り出した信長は、無造作にそれを放り投げた。
秀吉は、腰を低くした姿勢で移動すると、素早く紙を受け取り、その場で平伏した。
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