第2章 暗闇
薄暗い部屋。
壊れた人形のように、私は岩壁に背中を預けていた。
ゆっくりと重い瞼を開けると、そこは暗闇だった。
時折どこかから聞こえる呻き声。
パチパチと音を立てる炎。
静寂の中で聞こえる二つの音。
その音を聞きながら、もう一度瞼を閉じた。
どのくらい時間が経っただろうか……?
目を開けると、視界は霞んでいるが遠くに炎が見えた。先程は全く目が見えなかったが、今度は微かに見える。
ホッとすると、思考も働き出す。
次に体を少し動かしてみるが、足首に繋がれた鎖が、ガチャリと鈍い音で床に落ちた。
そこで、拘束されているのだと分かった。
しかし、予想外なことに、両手は自由。
明らかに子供だと思い、手加減しているのだろうと自嘲気味に思った。
部屋には窓もなく、背後が岩壁のせいかジメジメとしている。
(暗いな。……ここどこかなぁ)
視線を彷徨わせるが、目が霞んでいるせいか、ほとんど見えない。
自分の手元が微かに見える程度だ。
ふと視線を膝に向けると、泥に塗れた藁があちこちに付いていた。
(ワンピースがドロドロ)
わずかにしか動かない手で、パタ、パタと体を叩き、服に付いた藁を払い落とした。
だが、逆効果だった。
(今ので手形まで付いた……最悪だ。これお気に入りなのに……)
自分の置かれている状況より、真っ白なワンピースが土で汚れている事の方が気になっていた。
記憶が曖昧で、この状態が何日続いているのか分からなかったが、私は冷静だった。
体には、わずかな力しか入らない。
服がかなり汚れているところを見ると、少なくとも二日。長くて三日はここに居るんだろう。
服は座ったままの状態で乱れていない。
とすると、放置されているのだという考えに至った。
しかし、その有り様に、これ以上何も考えたくないと、再び思考を停止した。