第3章 不二とのダブルス
「でも、あたしなんかが勝手に入っちゃ…」
「手塚にあとで言っとくよ。それに荷物も、もしここの棚に置くの嫌だったらカギ付きのロッカーあるから」
「ありがとうございます…」
不二先輩って…優しい!
不二が自分に気を回してくれていることに恐縮しながら、萌はコートに出て準備運動を始めた。
「体ほぐれたら軽く打とうか」
すると不二のほうからウォーミングアップを誘ってきてくれる。お言葉に甘えてコートに入った。
丁度アップを終えた頃、手塚が現れ部員を集合させた。
「全員揃ってるな。アップの済んだ者からランニング開始!終わり次第本日の練習メニューを行う」
…あっ、リョーマ君の伝言!
足早に手塚の元へ駆けていって萌が連絡を伝えると、手塚は了承した後やや心配そうに付け足した。
「夢野、大会も近いが、練習中くれぐれも無理はするな」
「はい!」
手塚は単に厳しいだけではなく、ちゃんと部員達に気を配っているのだろう。萌はその何気ない一言に彼の優しさを感じた。
そこへ女テニのコートからウエア姿の瑠羽がやって来た。
「ランニングはまだ?一緒に走ろっか」
男子に続いて萌達もグラウンドに出る。瑠羽と一緒に練習出来るのは萌にとって心強かった。練習に、そしてテニスに対する姿勢も情熱も尊敬出来る先輩だ。女子レギュラーの座はもちろん、ミクスドに選ばれるのにも納得がいく。
やっとの思いでランニングを終えてレシーブ練習、ボレー練習などの合同練習をこなすと、最後のメニューであるダブルスの練習試合が待っていた。
「よし、ではこれから練習試合を行う。Aコートはミクスドの練習用にあてる。その他の者は割り振りに沿って試合を開始しろ」
手塚の指示に返事をして皆それぞれのコートへ赴く。
「菊丸と来葉、不二と夢野はAコートに入れ」
え…菊丸先輩たちが相手ってこと?
手塚の声に動揺する萌とは反対側のコートへ菊丸と瑠羽がやって来る。
「よおーし瑠羽ちゃん、出番だぞぉ。勝ちにいこーにゃー!」
「うん。よろしくね菊丸君」
「…大丈夫?ちょっち息上がっちゃってる?」