第3章 不二とのダブルス
「ほら…あの子じゃない?不二君と組んで大会に出るのって」
「なにそれ、だって1年でしょー?」
…なんか……見られてる?
校内を歩いているだけで、最近妙に女子の視線を感じる萌。
不二先輩とペア組んだってだけでもの凄く敵が増えてるような…
テニス部の人気を思い知らされるのはこういう時だ。校内で手塚や不二を見かけて騒ぐ女子がとても多いのである。
「…あ、夢野」
「あれ、リョーマ君」
廊下でふいに呼び止められ、見るとテニスバッグを持ったリョーマがいた。
「丁度良かった。俺、図書委員の仕事で部活少し遅れるから。伝えといて欲しいんだけど」
「わかった。言っとくね」
大会が近いせいもあるけど、今じゃフツーに男テニ部員の如く部活してるとこが自分でも怖い。しかもフツーにリョーマ君に伝言頼まれてるし。
「おっ?夢野じゃん!」
玄関口でまたもや声を掛けられる。なんと菊丸と不二が二人揃ってこちらを見ていた。
「おーっす!これから部活?一緒に行こうにゃ~」
再び周囲の女子のキビシイ視線を浴びる萌。冷や汗が垂れつつも行く先も一緒なので同行することにした。
「ぶっかつぶかつ~、楽しいぶかつぅ~」
菊丸は謎めいた歌を高らかに歌いながら数歩先を軽快なステップで進んでいく。遅れて歩く萌は隣の不二に話し掛けた。
「先輩達って仲良いんですね」
「エージと僕?うん、一緒のクラスなんだ。だから大抵一緒に部活に行くことになってね」
そうなんだ。菊丸先輩がいるクラスって楽しそうだな。
「ん?なになに?今俺のこと話してたあ?」
話に混ぜろとばかりに勢いよく後ろを振り返った菊丸に萌は笑い掛けた。
「菊丸先輩上機嫌ですね」
「だあってこれからたのしー部活じゃん!今日もバッチリ気合い充分!きっく丸花丸二重まるぅ~!」
部室に到着し荷物を置くと、ウエアを持ってトイレに行こうとする萌に気付いて不二が口を開いた。
「…夢野、もしかしていつもトイレで着替えてる?」
「あ…はい」
「そっか。じゃあさ、そこのドア入って。狭いけど一応事務室になってるんだ。手塚と大石しか入らないし…そこで着替えれば?」