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sweet and sour time

第20章 関東大会


 ついに関東大会が始まった。出だしは好調で、その勢いのまま菊丸と共に試合を勝ち抜いていく。
 続く準々決勝戦は千葉の強豪、六角中と対戦することになった。対戦相手の佐伯は動体視力の良さが持ち味のようで、菊丸を徹底的にマークしつつペアの相方に指示を出し、的確にこちらの嫌なところをついてきていた。菊丸は動きにくそうにしている。
 …ここはあたしが頑張らないと。
 なるべく相手の動きを読んで死に物狂いで拾いまくった。しかし相手のペアも粘り強く、一筋縄ではいかない。菊丸が封じられていては今一つ決定打に欠けてしまっていた。ポイントに結びつかず、焦りばかりがつのってしまう。

 もっと、もっと走って。
 力を込めて打ち返して。
 そうじゃないと負けてしまう。
 先輩とのペアが、終わってしまう。

 けれど菊丸は諦めずに萌にサインを出してくれていた。
 …あたしが攻める。何としてもポイントを取る!
 両者ともポイントを取られたり盛り返したりと、拮抗する展開が続いた。
 もし負けたら…悲しい結果の予感に胸が押し潰されそうだ。その度に足がもつれそうになるから、終盤は何も考えず夢中でボールを追っていた。

「ゲームアンドマッチ!ウォンバイ六角中!」

 審判員のコールが響き渡るなか、呆然とその場に立ち尽くした。
 悔しかった。そのうち悔しさより悲しさのほうが強くなってきた。目にじわじわと涙が溜まってくる。

「夢野」

 佇んだきりの萌の元へ菊丸がやって来る。彼に背中をそっと押され、促されるまま対戦相手と握手をした。

「とても良い試合だったよ」

 すると、ふと佐伯が萌に話し掛けてきた。

「君はまだ1年だろう?来年もうちと戦ってくれるかい?剣太郎が楽しみにしてるからね」

 佐伯は六角ベンチの方にちらっと視線を送っている。
 彼が、精一杯プレーした相手を尊重したのか、暗い表情の萌を励ましたかったのかは分からない。優しい声で健闘をねぎらうとネットの向こう側から微笑んだ。
 来年、その言葉に溜めていた涙がわっと零れてきてしまった。
 来年はもう…先輩達はいない。
















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